研究課題/領域番号 |
16H04352
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 輝光 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20423387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁性細線 / 磁壁移動 / マイクロマグネティックス |
研究実績の概要 |
本年度は磁壁移動実験に用いる薄膜における交換結合部の結合強度の向上、高速で移動する磁壁検出のための装置改良、磁性細線形状の最適化による磁壁移動速度の安定化を目指したコンピュータシミュレーションを行った。 磁性細線の一部に軟磁性層との交換結合構造部を付与することで磁性細線に磁壁を導入することが容易になる。これまではフォトリソグラフィー技術も用いて細線の一部に交換結合部をパターン化して作製していたが、この方法では残留レジストの影響で強い交換結合が得られず、磁壁の導入が困難であった。これをメタルマスク等を用いてパターン化することで強い交換結合を付与することに成功した。 これまでに磁壁移動検出に使用していたKerr効果測定装置は使用しているフォトディテクタの反応速度が遅く、高速で移動する磁壁の検出が困難であるため、高速応答が可能なフォトディテクタを導入し、これに合わせた差動増幅器を作成している。現状では差動増幅器のノイズが大きいため、現在これを改良中である. 磁性細線中を移動する磁壁の移動速度は、磁壁構造に依存することが知られており、大電流を印加した場合には磁壁構造を周期的に変化させながら磁壁が移動するため、磁壁の移動速度が安定化しないことが知られている。そこでCo/Niの磁気特性を想定し、細線の厚みが8nm、幅32nmの場合にはNeel型の磁壁が安定的であり、大電流を印加した場合でも磁壁構造を変えずに磁壁が移動するため、磁壁の安定転送が可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁壁移動実験に用いるフォトディテクタの応答速度が遅く、現在はこれを高速応答可能なものに入れ替えて実験を行っているが、高速に反応するものはディテクタのサイズが小さいため、ノイズの影響が大きくなる。磁壁の移動による信号がノイズに埋もれており、現状では磁壁移動速度を明確にできていないためやや実験の進捗が遅れているが、コンピュータシミュレーションにより細線のサイズを最適化することで磁壁の移動速度を安定化させることが可能であることを既に明らかにした点は計画以上の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
磁壁移動速度の測定にしようするKerr効果測定装置の高速応答化を早急に行う。測定系のノイズを低減することで磁壁移動速度を実験的に示し、コンピュータシミュレーションを併用してβ値を推定する。また、低飽和磁化材料であるTbFeCoを使用して磁壁移動に必要な電流値の低減を図る。
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