圧電MEMSトランスデューサと強誘電体ゲートFETの集積化により、超音波の高感度検出手法の確立に取り組んだ。チタン酸ジルコン酸鉛薄膜を用いて試作した圧電MEMSトランスデューサは、良好な超音波送信特性を示したが、受信感度の向上との両立には様々な課題があることが明らかになった。そこで高い圧電g定数を有する有機強誘電体薄膜を採用することにした。シミュレーションの結果、数μmの膜厚を有する有機強誘電体を用いることで、10倍程度の感度向上が期待できることを明らかにした。さらに、塗布法を用いて2μm程度の膜厚の試料を作製し、圧電特性評価を行った。詳細な作製条件の最適化の結果、融点直下で結晶化アニールを行うことにより、圧電特性が向上することを見出した。 強誘電体ゲートFETについては、強誘電体が持つ負性静電容量の特性に起因した急峻スイッチングの発現機構について理論的に解析した。半導体の表面電荷の理論と強誘電体の分極反転モデルを組み合わせ、時間展開計算を行う手法を開発した。その結果、強誘電体の分極反転と半導体のキャリアの蓄積反転の時定数の違いにより、非定常状態が生み出され、それが定常状態に遷移する過程で急峻スイッチングが発現する新しい機構を見出すことができた。現状では、その急峻スイッチング特性には履歴があり、on時とoff時の閾値電圧が異なる。センシング応用には履歴のない急峻スイッチング特性の実現に向けて更なる研究が必要である。
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