研究課題/領域番号 |
16H04354
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤澤 浩訓 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (30285340)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / 強誘電体 / キャパシタ / ハフニア / 酸化亜鉛 |
研究実績の概要 |
Al添加ZnO/m面Al2O3及びZnOナノワイヤ上でのHfO2薄膜の結晶化について検討した.熱処理の温度及び時間を様々に変化させたが,Al添加ZnO薄膜上では強誘電性を示す斜方晶HfO2は得られなかった.一方,ZnOナノワイヤ上では上部ZnO電極の有無もあわせて検討し,600℃以上かつ5分の熱処理で上部ZnO電極の有無によらず斜方晶HfO2が得られることを見いだした.HfO2の結晶化は応力に敏感であるとされており,これらの結晶化挙動の違いは,Al2O3基板による熱応力が単斜晶を安定化させる一方で,ナノワイヤ上では斜方晶が得られやすい状況にあることによると考えられる.また,BiFeO3薄膜のMOCVD成長技術を確立するため,SrTiO3単結晶基板上での組成制御と強酸化雰囲気の効果について検討し,Bi/Fe比の精密な制御と強酸化条件によって,スパッタ膜に比べ絶縁性が大幅に向上し,リーク電流は2-3桁低下することを見いだした. AlドープZnO (AZO)薄膜上でのZnOナノワイヤのサイズ及び密度制御について検討し,Pt上と同様のサイズ制御が可能であり,直径100-200nm,長さ~10μmのZnO,アスペクト比50以上のZnOナノワイヤを得た.しかしながら,密度制御に関しては,二段階成長法により10μm-2以下の低密度化が可能なPt上に比べ,AZO上では20μm-2以下の低密度化は困難であった.これはPtの結晶粒径が500nm程度であるのに比べ,AZOのそれが200nm以下と小さく,ZnOの成長の起点が高密度化したためである. ZnO/HfO2/ZnOナノワイヤキャパシタを作製し,その電気的特性の評価を行った.強誘電性を確認するには至らなかったが,同じ投影面積の平板キャパシタに比べ蓄積電荷密度が3倍以上に増加し,ナノワイヤ化による実効面積の増大を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HfO2及びBFO薄膜のMOCVD技術の確立,ZnO/HfO2/ZnOナノワイヤキャパシタ構造の作製に関しては当初の予定通り進捗している.一方,ZnOナノワイヤ(NW)上へのHfO2やBiFeO3薄膜の成長に関する基礎的知見を得るために,ZnO NW側面と同じm面Al添加ZnO薄膜上へのこれら薄膜の成長を試みたが,ZnO NWとは成長や結晶化の挙動が異なることが判明し,格子定数の精密測定などの構造評価には至らなかった.ただし,NW上では斜方晶HfO2が比較的容易に得られることが明らかとなったため,全体の進展に影響は無い. ZnO NWコアと外周ZnO電極の導電制御および選択成長時の成長の起点制御に向けて,まずはスパッタ成膜したAl添加ZnO (AZO)薄膜をバッファ層として用いることを検討した.ZnO NW成長時には,NW成長に先だって薄膜状の初期成長層が形成されるが,これを導電性の高いAZOで置き換える試みである.しかし,スパッタAZO膜は粒径が小さく,期待したような初期成長層の置き換えは困難であることが明らかとなった.そのため,これらの知見をもとに取りかかる予定であった,Al添加ZnO NWの作製と選択成長の実現がやや遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は予定通り,ZnO/強誘電体/ZnO NW-C/Trの試作・評価を進めるとともに,Al添加ZnO NWの作製と選択成長に取り組む.NW-C/Trに関しては,NW間の空隙を絶縁体もしくは導電体で充填した構造を作製し,電気的特性の評価を進める.Al添加ZnO NWは,Zn原料とAl原料を混合したカクテル原料を用いて作製する.選択成長に関しては,予定していた数種類の構造のうち,予備実験にもとづいて単一NWの成長に適した構造を決定できており,それを用いることで遅れ気味の状況を挽回する.
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