研究実績の概要 |
本年度は主にナノワイヤキャパシタ/トランジスタの試作・評価を行った. 基板上に垂直に成長したZnOナノワイヤをテンプレートとして,膜厚10~30nmの強誘電体(Hf,Zr)O2を絶縁層とするナノワイヤキャパシタ/トランジスタを作製した.(Hf,Zr)O2層の膜厚が大きい場合には,結晶化アニール後に急速熱処理による急速な膨張/収縮に伴うひび割れが生じたため,アニール温度・時間などをあらためて再検討した.その結果,昇温速度を30℃/min以下とすることで,(Hf,Zr)O2層をひび割れなく結晶化させることに成功した.ナノワイヤキャパシタに対しては,直径数10μmの上部電極を約10万本のナノワイヤキャパシタ上に一括して形成し,電気的特性の評価を行ったところ,キャパシタとしての動作と表面積増大による容量増加を確認できた.ナノワイヤトランジスタに対しては,Tiゲート電極の作製条件とその後の研磨条件を検討し,個々のZnOナノワイヤチャネルにAFM探針でコンタクト可能な構造を作製することに成功した.AFMを用いてチャネルコンダクタンスの測定を行い,ゲート電圧によって変調可能なことを見いだした. ZnOナノワイヤの選択成長についても検討を行い,構造を最適化することによって直径約50nmの電極上に単一のナノワイヤを形成することに成功した. 強誘電性絶縁層として用いるBiFeO3薄膜のMOCVD成長についても成膜圧力の最適化を進め,成膜圧力によってプロセスウィンドウの制御が可能であることを見いだした.また,エピタキシャル膜に関する知見をもとに,多結晶膜の作製を行い,強誘電性を示すBiFeO3薄膜を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナノワイヤキャパシタ/トランジスタ構造の基本的な作製・評価技術はほぼ確立したが,いずれも(Hf,Zr)O2層の強誘電性に起因する明確なヒステリシスループを観察するには至らなかったため,上記評価とした.ZnOナノワイヤは自己集合的に作製しているため,表面積のばらつきにより(Hf,Zr)O2層の膜厚を充分な精度で制御できなかったことも充分な強誘電性(Hf,Zr)O2が得られなかった原因の一つである.今後は,ZnOナノワイヤと(Hf,Zr)O2層の成長条件と結晶化条件のさらなる最適化を進め,充分な強誘電性と絶縁性の確保し,不揮発性動作の確認を目指す. ナノワイヤ間を絶縁体もしくは金属で充填するために,電子ビーム蒸着法による薄膜形成を試みたが,ナノワイヤの先端および側面への堆積が予想以上に多く,多層化は困難であった. AFMによる電気的特性の測定においては,市販のPtIr5コート探針ではZnOチャネルに対してショットキー接触となることが問題となったため,オーミック接触が期待できるTiコートによる導電性探針の作製と電気的特性の評価が必要であることが明らかとなった.
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