研究実績の概要 |
本年度はナノワイヤキャパシタおよびトランジスタの高密度化に向けた選択成長技術の確立とそれらの特性評価,強誘電体HfO2,BiFeO3薄膜の高品質化に取り組んだ. まず,ZnOナノワイヤテンプレートの選択成長の機構について調べ,成長の起点となるPtドットの間隔が20μm以下であれば,Ptドット以外の基板表面への堆積なくナノワイヤを形成でき,またPtドット間の距離によるサイズ制御が可能であることを見いだした.これに基づき,ドット間隔の縮小による高密度化を試みたが,核形成のタイミングにばらつきによるナノワイヤのサイズのばらつきが増大し,選択成長では一様なPt薄膜上とは異なり,均一なサイズのナノワイヤが得られる場合の最大密度は間隔数μmに限られることを明らかにした. 次に斜方晶(Hf,Zr)O2薄膜を有するナノワイヤキャパシタにおいて,リーク電流を含むものの,強誘電性に起因するP-Eヒステリシスループを得た.しかしながら実効面積を考慮した残留分極は最大0.5μC/cm2と,一般に薄膜で観測される残留分極の1/20以下であった.また,(Hf,Zr)O2にかわる強誘電体として,MOCVD法による高品質BiFeO3薄膜の作製を行い,薄膜組成の精密制御と酸化鉄シード層の導入により,リーク電流密度が10-7~10-8A/cm2の高絶縁性を達成した. NAND構造の作製に向け,ナノワイヤ間への選択的な薄膜形成についても検討を行った.蒸着粒子の直進性の高い真空蒸着法やスパッタ法を用いたが,ナノワイヤ側面への堆積物が除去できず,NAND構造を形成するには至らなかった. 本研究では,強誘電体ナノワイヤキャパシタおよびトランジスタを用いた超高集積強誘電体メモリ実現の可能性を原理的には実証できたが,得られた強誘電性は不十分であったため,今後も引き続き強誘電特性の向上とNAND構造の実現に取り組む.
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