研究課題/領域番号 |
16H04355
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牧 英之 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (10339715)
|
研究分担者 |
森山 悟士 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (00415324)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 光デバイス・光回路 / ナノカーボン |
研究実績の概要 |
本研究では、化合物半導体に代わる全く新しい材料系としてナノカーボン材料に注目し、シリコン上に集積化が可能な超高速のナノカーボン発光・受光素子を開発することを目的としている。ここでは、ナノカーボン光デバイスの高速化・高効率化に関する学理追求、高集積・大面積作製プロセスといったナノカーボン光デバイスの実用化技術構築を行う。さらに、シリコンフォトニクスや光共振器との融合技術構築を進め、最終的に超高速・高集積・低コストの高密度光インターコネクト技術へ応用することを目標としている。今年度は、黒体放射発光素子における高速発光のメカニズム解明や新たな発光素子プロセスの開発、および、EL発光素子の高輝度化に向けたキャリアダイナミクス観測のための新たな測定系の構築などに関して、研究を進めてきた。 黒体放射発光素子では、グラフェン黒体放射発光素子に関して、シミュレーションによる詳細な高速発光メカニズムの検討を進め、実験との比較により、グラフェン特有の高速発光機構が確認された。これにより、グラフェン発光素子において、デバイス構造の最適化への応用が可能となった。また、従来のスコッチテープによる機械剥離法に代わり、CVD法により成長したグラフェンによる発光素子作製が可能であることを示した。 EL発光素子では、CVD法により作成したカーボンナノチューブを用いて、発光素子作製を進めた。発光素子内でのキャリアダイナミクスを明らかにするため、温度可変な環境下でのEL測定系の構築を進めてきた。これらを用いて、今後、キャリアダイナミクスを明らかにするとともに、量子井戸構造やショットキー障壁制御による高輝度化に関する研究を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、(1)黒体放射発光素子の高速化・高輝度化・プロセス探索、および(2)EL発光素子の高速化・高輝度化・高効率化に関する研究を行うとした。今年度は、その計画通りに進めてきた。その結果、黒体放射発光素子では、高速な黒体放射発光のメカニズム解明とその指針を明らかにすることができた。また、グラフェン発光素子では、従来の機械剥離法に代わって大面積化が可能なCVD法による発光素子作製を進めたことから、当初の計画通りの成果が得られた。EL発光素子研究では、高速化・高輝度化・高効率化に不可欠なキャリアダイナミクスに関して、その測定系の構築を進めたことから、計画通りに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
黒体放射発光素子の高速化・高輝度化・プロセス探索に関する研究は順調に進んでいることから、今後の研究でそれらの具体的な成果を明らかにし、実用化に向けた指針を示すことを目標に進める。EL発光素子では、今年度進めたキャリアダイナミクス観測法を利用して、新たな量子井戸やショットキー障壁の設計法を提案することを目標とする。それに加えて、光インターコネクトの実現にむけて、ナノカーボンによる受光素子の開発も進め、高集積な光デバイスにおいて、ナノカーボンの優位性を示す。
|