研究課題
超高速撮像のための“裏面照射型マルチ電荷収集ゲート構造(BSI-MCG)”を提案し,これに基づいた撮像素子開発を進めた.本年度の主な実績は以下のとおりである.1. 1枚の撮像素子で1億枚/秒(100Mfps)の超高速撮影が可能な撮像素子を開発した.画素数は512×576×2画素(約60万画素)で,各画素は5つの電荷収集ゲートをもつ.したがって,連続撮影枚数は5枚である.画素数を半分(約30万画素)にすることで連続10枚の撮影が可能である.テストカメラを製作し,撮影実験を行った.実験では,短パルスレーザ(半値幅およそ77ps,立ち上がりから消光までおよそ400ps)を用いて撮影速度の検証を行った.カメラによる撮影開始とレーザ照射を同時に行った場合,レーザ光の像は1枚目の撮影画像に映っていた.レーザ照射を,撮影開始から10nsずつ遅らせるごとに,レーザ光の像が映る画像は2枚目,3枚目,4枚目,5枚目となった.このような実験により,1億枚/秒の撮影速度が確認できた.また同時に,昨年度までのシミュレーション解析で予測されたようなクロストークが現れることも確認された.2. 撮影速度を向上させるためのセンサ構造の検討を行った.昨年度までのシミュレーション解析により,信号電荷の水平方向への移動を抑制することが時間分解能の向上につながることが明らかになっている.このための構造として,Deep Trench Insulator(DTI)を用いることを考えた.厚さ10μmのNSI-MCGセンサに対して,裏面から深さ7μm,直径4μmでDTIを作り込んだ構造において,モンテカルロ法を用いたシミュレーションにより時間分解能を見積もった.その結果,信号電荷の収集電極への到達時間の標準偏差は25.2psとなり,その2倍を時間分解能とすると50.4psとなった.
2: おおむね順調に進展している
BSI-MCG構造をもつセンサにより1億枚/秒の撮影実験を行い,提案構造の動作が確認できた.さらに,撮影速度を向上させるためのセンサ構造についても検討が進んでいる.
1. 撮影速度向上のためのセンサ構造の検討と設計:センサ構造の検討をさらに進めた上で,本研究における目標時間分解能を達成するための具体的なセンサ設計を行う.2. 画質向上のためのセンサ設計修正:撮影実験の結果により明らかになった課題を整理し,これを改善することで撮影画像の画質改善をはかる.3. 高速ドライバ回路および3D積層化設計:ドライバ回路とセンサチップとの3D積層化設計と実装を引き続き進める.
すべて 2018 2017
すべて 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)