平成29年度に弱結合モード多重技術を活用した257 Tbit/s伝送を達成した。更なる大容量化および実用化を追求し、今年度は、(1) 10モードファイバにおけるモード間結合の定量的評価、および、(2)受信器に必要となるMIMO信号処理の実時間回路実装を検討した。 (1) 10モードファイバにおけるモード間結合の定量的評価:弱結合モード多重伝送では、異種LPモードからの結合がそのままクロストークにつながり、モードクロストークが伝送性能を制限する。本研究では、ファイバ接続エラーによるモード間結合をモデル化し、シミュレーションからその統計的性質を明らかとした。10モードファイバコネクタ接続において、現状のコネクタ精度では、10多段接続によって-20 dB以上のクロストークが生じる率が極めて大きいことが示された。現状のコネクタ精度では、弱結合モード多重伝送への適用が困難であることがわかった。 (2) MIMOの実時間回路実装:弱結合モード多重伝送では、受信器において、縮退モード多重分離するための4x4行列サイズのMIMO信号処理が必須である。実用化には、この実時間回路実装が必要不可欠である。本研究では、FPGAを用いて実時間MIMO信号処理を実装し、その性能を評価した。FPGAは2世代前のものを使用したにも関わらず、回路実装が可能であることがわかった。その実時間MIMO回路を用いて、波長分割多重・偏波多重位相シフトキーイング光信号の48-km弱結合10モードファイバ伝送実験を行った。実時間MIMO回路において、極めて安定に縮退モード多重分離が達成され、良好なビット誤り率特性が得られた。
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