研究実績の概要 |
国際標準化の動向を調査した結果,将来の没入型メディアアプリケーションでは,水平視差だけでなく垂直視差の再現も不可欠である.前年度に開発した理論を実験的に検証した.その結果を分析して垂直視差も再現できるように理論を改良し,新しい4次元極座標光線空間理論を構築した.CGで作成した全周3Dシーンを,水平に置かれた円周上で1度毎に配置した発散型カメラで撮影し,360枚の全周多視点画像を取得した.この多視点画像データに前年度に開発した光線空間理論を適用し,多視点画像データを光線データに変換するとともに,様々な視点位置での画像生成実験を行った.その結果,生成画像では水平視差は再現できたが,垂直視差が再現できなかった.そこで, 発散型カメラに加えて,収束型カメラを同時に配置する,全方位カメラの円周配置による光線取得方式を研究した.円周上に配置した多数の全方位カメラで撮影した多視点映像から得られる光線情報を表現する4次元極座標光線空間法と,自由視点画像生成法を開発した.4次元極座標光線空間法の研究では,光線を方向ベクトル(θ, φ) とそれに垂直な基準面上の位置ベクトル(ξ, η)の4次元パラメータで記述し,3D空間中の任意の1点を様々な方向に通過する光線(ξ, η, θ, φ)の集合が4次元光線空間内で楕円らせんを構成することを明らかにした.これは,昨年度に開発した,正弦波から構成される光線空間を拡張したものとなっている.自由視点画像生成法の研究では,生成すべき光線の光源から放射される光線群の光線空間と,全方位カメラの円周配置によって取得される光線空間の共通部分を求めて,光線を補間生成する方式を開発した.この方式によって様々な視点位置での全周画像生成実験を行った結果,水平視差と垂直視差の双方を持つ自由視点画像を生成することができた.更に視線方向を回転させる全方位画像の生成にも成功した.
|