本年度は、昨年に引き続き、磁性薄膜において観測された数MHzから数十MHzの比較的低周波でのインピーダンス変化の磁気センサ利用について検討するため、素子幅や膜厚を系統的に変化させた素子を作製し、素子への入力電力を変化させて、その外部磁界印加時の振る舞いを広範囲の周波数において観測した。一方、素子の長さを100ミクロン以下に小形化した素子の作製を行い、その低周波領域におけるインピーダンス挙動について検討した。さらに、バイアス電流の効果について検討し、以下の知見を得た。(1)磁壁共鳴の有無は寸法、入力電力に依存し、共鳴周波数は印加磁界とともに増加する。ただし、入力電力が小さいと共鳴周波数は低周波領域で、入力が大きいと高周波側で推移する。(2) インピーダンスの変化量は、磁場印加とともに増加し、入力電力とともに増加傾向を示すが、入力電力が大きく過ぎると磁壁共鳴を生じる磁場範囲が狭くなり、変化量の最大値は減少する。(3) 直流バイアス電流を印加すると、交流入力が高周波領域の場合に見られるのと同様、外部磁界依存性の非対称性を生じる。(4) 100マイクロメートルまで小型化した素子においても比較的低周波でのインピーダンス変化が得られた。ただし、インダクタンスが急激に低下する周波数やインピーダンスがピークを取る周波数領域についてはやや高周波側にシフトする。この原理解明については今後の課題となる。以上得られた知見により、低コストな小型・高感度磁界センサの実現可能性を示すことができた。また、試作センサは設計・作製を進めたが、システム組込みには間に合わず、代わりに市販品のセンサでシステム動作は確認をした。
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