研究課題/領域番号 |
16H04372
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大坊 真洋 岩手大学, 理工学部, 准教授 (20344616)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ベクトルポテンシャル / コイル / トランス / 非破壊検査 |
研究実績の概要 |
細長く柔軟なソレノイドコイルを、空間に回転対称で周回させると、その周回した軸と平行な方向にベクトルポテンシャルが発生する。我々はこのような二重に入れ子になったコイルをベクトルポテンシャルコイルと呼び、その基礎と応用を研究している。 無限に長いソレノイドコイルの場合、そのコイルの内部には磁束が存在するが、外部には磁束は存在しない。有限長であっても、事実上測定に影響を与えるほどの磁場は存在しない。 一方、ベクトルポテンシャルはソレノイドコイルの内外に存在できる。ここでベクトルポテンシャルコイルに交流電流を流すと、その時間微分に比例した電界を発生できる。その電界が発生している場所に導電性の媒体があれば、電界が空間積分されて開放電圧として測定できる。つまり、磁場が全く無い空間であっても非接触で媒体に誘導できる。この開放電圧の位相は自身や周囲の電気抵抗と静電容量に敏感である。また、開放電圧だけでなく、外部負荷を通じて電流が流れるようにすれば媒体の抵抗を測定することもできる。すなわち、ベクトルポテンシャルの印加により、物体内部の電気的情報を計測可能である。 さらに、ベクトルポテンシャルを印加する方向を変化させれば、変数のパラメータを増加させて、極端な劣決定問題を緩和することが可能となる。これにより逆問題解析をしやすくなり、従来のインピーダンストモグラフィーの低空間解像度の問題を解決する新しい手法となりうる。我々は新しい電気計測方法に必要な各種要素技術を研究している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)均一なベクトルポテンシャルを発生させる球形の大型ベクトルポテンシャルコイルを製作した。大型のアクリル製の半球(直径500 mm)に6条巻のソレノイドコイルを巻き、2つの半球を合わせることにより、球体コイルを実現した。このコイル内部の電界を測定し、電界が円筒コイルよりも均一であることを確認した。 (2)ベクトルポテンシャルコイル中で試料をステッピングモータにより回転させて、様々な角度からベクトルポテンシャルを印加することができる装置を製作した。また、試料の高さもステッピングモーターで制御することにより、下記の電極と接触させることを可能とした。 (3)試料に多数のピン電極を接触させて、それらの電極と電圧・電流計の間の接続を切り替えるスイッチアレイを製作した。 (4)二次元試料のインピーダンスデータを収集するソフトウェアに関しては、まだ完成に至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)ピン電極セットが球形ベクトルポテンシャルコイル中で回転する必要があるが、電極数が200チャンネル以上あるため、スペースに余裕がなくケーブルのネジレや引き回しに課題がある。球体コイルをさらに大型化して再検討する。 (2)球体ベクトルポテンシャルコイル中のベクトルポテンシャルの分布をシミュレーションによって数値計算する。分布が均一になるように、球体に線材を巻きつける可変ピッチの最適条件を見出す。 (3)ベクトルポテンシャルに比例した電圧を発生させる方法を開発し、ベクトルポテンシャルの分布を測定する。 (4)球体ベクトルポテンシャルコイル中のベクトルポテンシャルの分布を測定し、シミュレーション結果と比較する。 (5)球形コイルが大型であるために、配線長が100 mを超え、高周波電流を流すことが困難になってきた。そこで、リッツ線を使用した細長いソレノイドコイル(ベクトルポテンシャルコイルの線材)を試みているが、リッツ線自体がネジレを持っているために巻線途中で撚れが生じる問題が発生している。専用の巻線機構を作成する。 (6)アルミの中空球の表面にベクトルポテンシャルコイルを巻いたシールド付きの球体ベクトルポテンシャルコイルを作成する。
|