ベクトルポテンシャルは、磁界や電界の元となる物理量であり、量子力学が適用されるミクロな領域ではアハラノフボーム効果として知られている。一方、マクロな領域では、磁界や電界が様々な電気機器の動作原理として使われおり、ベクトルポテンシャルを利用しているものは見当たらない。 我々は、細長く柔軟なソレノイドコイルを、円筒、球、トロイダルの基体に巻きつけたベクトルポテンシャルコイルを考案し、ベクトルポテンシャルを内部空間に発生させる研究をしてきた。このベクトルポテンシャルは、途中にシールドがあっても透過することができ、対象の内部に誘導電圧を発生させることが可能である。この効果を利用して、対象内部のインピーダンスの空間分布を計測する新しいトモグラフィーの基本技術を開発することが、本研究の目的である。今年度は、球形ベクトルポテンシャルコイルの設計、数値シミュレーションによる球形ベクトルポテンシャルコイル内外のベクトルポテンシャルの分布、試料回転移動機構の制作、作成した球形コイルでの電界の分布計測、高周波用のリッツ線のベクトルポテンシャルコイルの製作、非接触による誘電体の計測を実施した。この研究により、ベクトルポテンシャルを活用するための基盤技術が開発され、今後、非破壊検査、非侵襲診断、量子情報処理、信号伝達などへのさらなる展開が期待される。
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