研究課題/領域番号 |
16H04373
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山越 芳樹 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (10174640)
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研究分担者 |
江田 廉 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40734273)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | せん断波 / 生体粘弾性 / 超音波映像法 |
研究実績の概要 |
生体組織の「硬さ」、「ぐりぐり感」、「張り」など組織のずり弾性特性は、癌などの確定診断に役立つとの期待から、ずり弾性特性を映像として得る映像法(エラストグラフィ)は世界中で精力的に研究が行われている。エラストグラフィは、生体組織中に周波数1kHz程度までのせん断波(横波、地震のS波に相当)を伝播させ、せん断波の伝播速度を超音波で計測することが基本になる。しかし、従来法である生体中に強力超音波を照射したときの音響放射圧でせん断波を発生させるARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)法は、手で触った硬さと測定値が矛盾する、測定値のバラつきが大きい、など精度や信頼性に疑問が呈されている。この理由としては、せん断波の伝播速度は組織の硬さにより数倍も変化するので組織境界で大きな屈折と反射が生じる、回折現象が大きく現れ回折波が複雑に伝播する、線維方向と直交方向では伝播速度が大きく変化する、など従来医用診断に使われてきた波動と異なり波動伝搬の媒質依存性が非常に強いことによる。 本研究では、研究代表者が開発したせん断波の実時間可視化法(Color Doppler Shear Wave Imaging法:以降CD SWI法と呼ぶ)を用いて、可視化技術の定量性、空間分解能を向上させるだけでなく、可視化を基礎とするせん断波の伝播制御、伝播速度の高精度・高分解能計測技術を開発し、これらをシステムとして一体化することで臨床で求められる精度と分解能を達成し、せん断波の新たな応用開拓とせん断波が主導する技術革新を生み出す基盤的技術を創出することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、伝播速度計測法を確立するために波数ベクトル解析に基づく伝播速度計測法を開発した。この速度推定法は、せん断波の回折による誤差を低減させる回折フリーな速度推定法である。さらにファントムを用いたこれら手法の精度や空間分解能の評価を従来法と比較検討することで行った。実用化を見据えた臨床へのトランスレーショナルリサーチの推進では、乳腺(乳がん診断)、リハビリテーションや原発性肩こりの定量評価を目的として骨格筋の硬さ評価について、複数の医療機関との共同研究の下で提案法の臨床評価を開始した。これら成果をまとめて内外の関連学会で報告したが、新たに提案法を使う穿刺時の刺挿入の精度を格段に向上させる新たな方法を発案し、特許出願を行うなど、当初の予想を超える成果を得た。また、実用化を目指して関連企業との共同研究を開始しており、試作品の開発を今後行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床との共同研究、企業との試作品開発の2点から研究を行う予定である。実用化を見据えた臨床へのトランスレーショナルリサーチの推進として、リハビリテーションの定量評価法のかし発を目指した研究、従来定量的な評価が出来なかった原発性肩こりの定量評価を目的とした研究が既に開始されており、これら研究は平成30年度も継続して実施する予定であり、成果の創出を図る。一方、実用化を目的とした研究では、地方自治体からの補助金の支援の下で実施予定であり、臨床へのトランスレーショナルリサーチと実用化を目指した研究を両輪として、本方法の有効性の確認と実用化を目指す。
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