研究実績の概要 |
現在、光ファイバを構造物に埋め込んだり、貼り付けたりすることで、構造物の状態を監視するセンシング技術に注目が集まっている。特に、分布型ブリュアンセンシングは、光ファイバ内で生じる散乱光から、長手方向に連続な分布測定ができる特徴があり、発展が期待されている。本研究では、ブリュアンセンシングに光周波数コムを用いることを提案している。光周波数コムは、スペクトルが精確に等しい周波数間隔で櫛状に並んだレーザ光であるため、複数の周波数の散乱光を同時に発生させ、それらの並列処理により、周波数掃引なしに高速で高感度測定が可能になると期待できる。 研究の要点は(i)広帯域コムの生成と、(ii)多モード入射光によるブリュアン散乱の生成と利得スペクトル測定、にある。(i),(ii)をそれぞれ検討し、高精度で短時間測定が可能なブリュアンセンサを実現することが目標である。28年度は(i),(ii)について、下記の検討を行った。
(i)光変調器による種コム生成と光ファイバ伝搬のみで広帯域コムを生成する技術を検討した。更に、この光周波数コム光源を光ファイバ回折格子による光ファイバセンサに導入し、センサとしての動作を確認した。 (ii)多モードポンプ光、多モードプローブ光によるブリュアン散乱の発生について検討を行った。平坦なスペクトルの多モードポンプ光、多モードプローブ光の生成に成功した。これにより、光源周波数を掃引することなくブリュアン利得スペクトルを精確に測定することが可能となった。更に、モード間隔の調整により、ブリュアン利得スペクトルの温度に対する周波数依存性を測定する際、実質的に任意の測定感度に制御可能なことを実験で明らかにした。一般に、ブリュアン利得スペクトルの温度依存性は1MHz/K程度だが、実質的に最大1,000倍の1GHz/Kを達成した。これは、ブリュアンセンサの測定分解能の向上につながると期待できる。
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