研究課題/領域番号 |
16H04375
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 康弘 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40374152)
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研究分担者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70243178)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光相関イメージング / ゴーストイメージング / 散乱光イメージング / 光相関顕微鏡 / 光周波数コム / コンプレッシブセンシング / 超微弱光イメージング / 光子イメージング |
研究実績の概要 |
本年度は,光相関イメージングのさらなる高感度化を目指した装置改良とそれに伴い得られた結果のアウトリーチ活動を行った. 前年度で得られた知見より,光相関イメージング法の感度特性が優れているということから,究極の感度を目指すべく検出光学系にフォトンカウンティング装置を導入した.ここでは,サンプルを照明開始した時間を記録しておき,その時間から光子が検出器に到達する時間を測定する手法を採用した.検出に用いる光子の数を減らすことにより測定感度の向上だけでなく,測定サンプルのダメージ軽減など様々な利点が加えられる.そこで,装置の検出光学系の大幅な改良を行った.特に,フォトンカウンティングが可能になるように環境光を遮断し,さらに,光ファイバを導入した.また,この検出器の導入に伴い,制御系PCの測定アルゴリズムの変更も行った.特に,光の到達時間を測定するために同期系の改良と調整を行った.DMDプロジェクタの駆動信号を光電子増倍管のトリガ信号に入力することで実現した.その結果,従来の光相関よりもさらに微弱な光でイメージングできることが測定より明らかになった.また,測定器の時間分解能に着目するとより安価な測定装置が構築できることもわかった. 一方のアウトリーチ活動では,国内学会と国際学会に参加した.具体的には,光学・応用物理関連の学会の他に,精密工学に関する学会でも講演した.その学会活動の中には,招待講演も複数回あった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の進捗状況は装置改良とアウトリーチ活動を行った. 装置改良は,システムの高感度化を推進した.ここでは,サンプルに照明を開始した時間から,光子を最初に検出した時間を光強度の代わりに用いる.光強度とその時間の間には相関があることが既知であることから利用できると考えた.さらに,微弱な光を検出するためには,環境光や照明光などのサンプル以外での散乱光が検出器に入射することを防ぐ必要がある.そこで,測定装置全体を暗幕で覆った.さらには,光電子増倍管に余計な光を導入できないようにするために,光ファイバを用いた検出光学系とした.光ファイバを用いることで,たとえば,環境光などの関係の無い光が存在したとしてもファイバ伝搬中で除外されるため,目的の光に特化した検出が可能となる.さらに,時間の検出にはモジュール化された光子検出システムを用いる.これは,データ取り込みソフトなども同封されていることから開発効率を向上させることができた.以上のシステムに,蛍光バンドパスフィルタを用いて基本特性を測定して実証した. 具体的な実験内容は,数値計算による確認,光強度と光子到達時間の相関を確認した後に,実際に前年度までのシステムに組み込んだ.数値計算では,従来の光相関イメージング法よりも,1.5倍ほどのコントラストの上昇が確認できた.さらに,光子到達時間とひかり強度の関係を実験的に確認したところ,100pW以下の非常に弱い光でも比例関係が得られることが分かった.また,実際に装置に組み込み蛍光イメージングを行ったところ,時間分解能の高い検出器を用いる方が強い光強度に対応できることが分かった. 以上の結果は,国内学会だけでなく米国の画像関連の学会で報告し好評であった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,超微弱な光によるイメージングシステムを構築できた.そこで,本研究の最終年度では,具体的な応用を目指す.また,若干の装置改良を行い応用の範囲拡大も同時に目指す. 本年度の装置の応用としては,生物学分野にターゲットを絞る予定である.当該分野では,とくに,蛍光色素のイメージングが一般的な分析手法として確立されている.しかしながら,蛍光退色による観察不全や,一分子イメージングなどのより詳細な観察の必要性からイメージング感度に関する課題が山積している.そこで,本システムを導入することで課題の解決を図る予定である.具体的には,DNAに蛍光色素を修飾させることで,一分子イメージングを行う予定である. また,光学系の若干の改良をおこない,近接場光のイメージングも行う予定である.この改良は,精密工学分野における数nm程度の微小欠陥や異物検出に用いることを想定している.そこで,対物レンズに輪帯照明的に入射さえることで,近接場発生に必用な全反射光学系を実現する.発生した,わずかなしみ出し光を欠陥や異物に当てることで三次元的なイメージングが可能であると考えた. 以上の研究の活動とともに,総括年として学会発表はもとより,論文として公表することを予定している.
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