研究課題/領域番号 |
16H04380
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山下 裕 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90210426)
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研究分担者 |
小林 孝一 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (50452115)
中村 文一 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 准教授 (70362837)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御工学 / 機械力学・制御 / 非線形制御 / 入力分配制御 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の研究を行った。 ・冗長入力に関して動的拡張を行い、拡張した状態に関する作為的なポテンシャルを元の系の制御リアプノフ関数に付加し、拡大系の制御リアプノフ関数を作ることで、冗長入力を決定する方法において、複雑な場合の付加ポテンシャルの設計に関する条件の緩和を行った。すなわち、元の系の状態xを固定したときの付加ポテンシャルの最小値がゼロでない場合に拡張した。その最小値はxの関数となるが、その関数のxに関する偏微分の大きさの上界を見積もる方法を示し、それを元に制御則を構成した。得られた制御則は、拡大系の制御リアプノフ関数を厳密に求めることなく設計でき、仮のポテンシャルに基づいた制御則に求めた上界に応じたゲインを掛けることで得られる。 ・車のヨーレート・横滑り角・ロール角・ロール角速度の制御に本方法を適用した。本手法は、低次元化された車両モデルに対し設計されたものであり、そのモデルに対しシミュレーションで有用性を確認した。左右輪のトルク配分のみで制御しきれないときのみ、アクセルコントロールとハンドル角介入が行われる制御(スパースな入力選択)がシミュレーション上で実現できた。 ・作為的なポテンシャルを簡単な形に限定することで、チェックが必要な付加ポテンシャルに関する条件が自動的に満たされる場合があることを示した。この厳密な証明は次年度以降で行う予定である。 ・上記の簡便なポテンシャル設計における「傾き」パラメータを、制約・要求の優先度順に定める方法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案アイデアの実用化における障害の1つであった、理論と設計のギャップが解消されつつある。具体的には、複雑な場合分けで構成された高次元空間上の仮のポテンシャルの最小点を求めることなく、最小値の時間変動の大きさの最大値を見積もることで、仮ポテンシャルをそのまま用いた制御則に見積もった値に応じたゲインを掛けることで入力分配の目的を達することができることを示した。また、応用の1つである車両のヨーレート・横滑り・ロール制御に関しては、必要最小限の低次元化モデルに対して実用的な入力分配(スパースな入力分配)をできることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度得られた結果を元に、構成的設計法を煮詰めていく。入力分配制御は、さまざまな制約・目的を同時に達成する方法であるが、構成的設計法を考える際には典型的なパターンを定め、それに対し明示的な設計手法を提案する予定である。また、車両制御においては、高次元のシミュレータを低次元化し本手法で設計しても目的を達することができるかどうか検証する。また、付加ポテンシャル手法とは別に線形計画法に帰着できるL1最適化を用いて、スパースな入力分配を実現する方法を示す。
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