研究課題/領域番号 |
16H04381
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大脇 大 東北大学, 工学研究科, 助教 (40551908)
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研究分担者 |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
杉本 靖博 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70402972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 昆虫 / ロボット義足 / 運動の介入 / 脚間協調 / 適応的運動能力 |
研究実績の概要 |
本研究では,昆虫と同等の外骨格構造を有するロボット義足による歩行運動への介入を通して,昆虫が示す適応的移動能力の基盤となる脚間協調機序を解明することを目的とする.具体的には,(1) 対象昆虫の筋骨格構造をX線マイクロCTで徹底的に調べ,ロボット義足を3次元プリンタで製作する.(2) 申請者らが提案した脚間協調制御則を拡張し実装したロボット義足による介入実験を行い,運動学,床反力,筋活動を同時計測することで制御モデルを改善する.(3) 介入→モデル改善を繰り返すことで昆虫の適応的移動能力を再現しうる制御則へと精緻化し,昆虫型外骨格ロボットにより実世界での適応能力の再現実験を行う.
初年度に構築した計測システムを用い,コオロギの脚切断前後の歩行パターンを解析した.具体的には,歩行中の脚の筋電位活動を計測し,脚切断前後における筋活動パターンの変容を解析した.その結果,通常歩行時においては,左右中脚において逆相同期の歩行パターンを示すのに対して,脚切断後は左右中脚が同相同期への変化していく様子を確認することができた.この結果は.進化的に昆虫が左右の同相同期回路を潜在的に有しており,脚の有する機械刺激受容器からのセンサフィードバックの働きによって,通常歩行時においては逆相同期の歩行パターンが発現していることを示唆する結果である.
今後は,この脚切断後の歩行パターンの変化に対して,ロボット義足を用いた力学的介入を行うことで,その歩行パターンがどのように変化するかを観察し,脚間協調メカニズムのさらなる解明を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,構築した計測システムを用いて,コオロギの脚切断後の筋活動パターンの変化を計測することができた. 計測した筋活動の変化を,Cross-spectrum analysisを用いて解析することによって,各脚の筋活動のタイミングの位相関係の変化を据えることができる手法を確立した.
得られた結果は,昆虫に内在する神経回路網の存在と,その力学的機械刺激パターンによる変容のメカニズムを示唆する結果であり,今後のロボット義足を用いた介入研究よる脚間協調メカニズムの深化につながる結果である.
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今後の研究の推進方策 |
ロボット義足を用いた歩行運動への介入実験,脚間協調制御則の解明
介入実験用ロボット義足を製作し,予備的な検証を行う.これまでの検討から,空気圧あるいは油圧を用いた駆動方式を第一候 補とし,昆虫の歩行に介入可能な義足を実現する.
これまで得られている,両中脚切断後に該当する脚を駆動する筋の発火タイミングが同期するという知見に基づき,脚切断後,義足を取り付け歩行運動に介入することで,昆虫が示す筋活動パターンの変容を計測する.これまで構築した筋活動の変容パターンを据える解析手法を拡張し,義足介入時の脚間協調パターンの適応過程を明らかにする.
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