研究課題/領域番号 |
16H04383
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三平 満司 東京工業大学, 工学院, 教授 (00196338)
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研究分担者 |
中浦 茂樹 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (20323793)
伊吹 竜也 東京工業大学, 工学院, 助教 (30725023)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御工学 / 機械力学 / 劣駆動系 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,当初の計画にあった重力場における制御に関する主要な課題である「可制御性構造解析に基づく最適なドローンの開発と制御」に注力し,順調に成果を挙げた.まず,既に成果を挙げているマルチロータ型飛行体(ドローン)の運動性能に基づく構造最適化の発展として,得られた構造が有する運動性能に基づく最適な位置・姿勢制御手法を新たに提案した.つぎに,同一平面上に同一の向きでロータが配置されるドローンに対して,安定した飛行を保証する可制御性を有する構造の条件を導出した.さらに,この解析結果を応用し,ロータ故障時にも安定した飛行が可能な耐故障性を有する構造の提案,および実機による検証実験を行った. また,当初の計画にはなかったドローンの制御に関する2つの課題についても成果を挙げた.まず,平成29年度に着手したドローンの未知ダイナミクス学習に基づき,新規の制御手法を提案した.ここでは,ドローンの完全なモデル化や空力干渉のモデル化が難しいことに着目し,これらをガウス過程回帰と呼ばれる機械学習手法に基づいて学習し,学習したモデルの不確かさに対してロバストな制御手法を提案している.さらに,地面付近の飛行で特に空力干渉を強く受けることを考慮し,提案手法によるドローンの着地実験を行うことによりその有効性を示した.また,平成30年度より新たに複数のクアッドロータから成るドローンネットワークに対する衝突回避を考慮したフォーメーション制御問題を考察した.ここでは,クアッドロータの位置ダイナミクスに対して動的な入出力線形化を行うことにより容易に位置が制御できることを示し,さらに個々のクアッドロータが分散的に2次計画法を解くことで衝突を回避する制御手法を新たに提案している. 以上の成果は,多くの査読付き国際会議論文に採択され,また国内会議発表でも好評を得ていることから,学術的に意義が認められている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は,当初の計画の通り重力場における制御に関する主要な課題に対して順調に成果を挙げた.さらに,新たにドローンの制御に関する2つの課題に着手し,これらに対しても成果を挙げている.以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,本研究の主要課題の1つである「可制御性構造解析に基づく最適なドローンの開発と制御」に注力する.まず,マルチロータ型飛行体のロータ配置構造の最適化に関する研究を進める.研究代表者らは,運動性能に関する評価指標を用いて6つのロータから成るヘキサロータの構造最適化問題を既に考察している.他方,現在主流であるクアッドロータやヘキサロータは,ロータが1つ故障するだけで可制御性が著しく劣化し,安定したホバリング飛行ができないという解析結果を既に得ており,この解析手法を応用することで対故障性を有する新たな構造の提案や実験検証を行っている.2019年度は,これらの構造設計手法を統合し,制御性能と耐故障性の双方を考慮した構造最適化問題に取り組む.さらに,飛行中にロータ配置構造が可変なマルチロータ型飛行体を新たに考察し,安定した飛行を保証しつつ機体の構造を変形可能な飛行体の考案,および制御手法の提案を試みる. また,研究代表者らは3次元剛体運動の最適制御問題に既に取り組んでいる.ここでは,3次元空間上の位置・姿勢制御問題に対して,剛体の運動性能を考慮した解析的な最適制御手法を新たに提案している.しかし,この解析的な制御手法の導出が容易ではないことから,重力場を考慮できていないことが課題であった.これに対して,2019年度は重力場を考慮したモデルを対象とし,最適制御問題の数値的解法の提案を目指す.ここで課題となるのは3次元空間上の姿勢ダイナミクスの表現方法であり,オイラー角表現や指数表現などの既存の表現形式では最適制御問題を解くにあたり計算コストが大きいことが実用上問題となる.これに対して,本研究ではCayley写像やデュアルクォータニオンといった新たな表現形式を導入することで,計算コストが小さい最適制御手法の提案を試みる.
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