令和元年度は,当初の計画にあった重力場における制御に関する主要な課題である「可制御性構造解析に基づく最適なドローンの開発と制御」に注力し,順調に成果を挙げた.まず,既に成果を挙げているマルチロータ型飛行体(ドローン)の運動性能に基づく構造最適化を発展させた.具体的には,同一平面上に同一の向きでロータが配置されるドローン構造に対して,昨年度までに既に提案していた可制御性解析に基づくロータ耐故障性解析と動的可操作性と呼ばれる運動性能指標に基づく構造最適化を統合した,一定の耐故障性を保証しつつ運動性能を最適化する構造設計手法を新たに提案した.つぎに,同一の向きでロータが配置される構造に対して昨年度までに提案していた可制御性解析に基づくホバリング可能性解析手法を発展させ,ロータを傾斜させて配置するより広いクラスの構造に対するホバリング可能構造の数値解析手法を新たに提案した. また,ドローンの位置・姿勢制御への適用を踏まえて,3次元剛体の運動制御に関する課題についても成果を挙げた.これは,当初の計画にはなかった課題である.まず,重力場を考慮した3次元剛体運動ダイナミクスに対して,位置・姿勢表現に新たにCayley写像やデュアルクォータニオンを導入することで,計算負荷の小さいオンライン最適位置・姿勢制御手法を提案した.さらに,本研究課題で昨年度までに設計した全駆動構造をもつドローンを用いた実機実験により,提案手法の有効性を確認した.また,Explicit Reference Governorと呼ばれる目標値整形機構を姿勢ダイナミクスを含む3次元剛体運動制御に拡張することで,入力制約および位置・姿勢拘束を考慮した新たな運動制御手法を提案した. 以上の成果は,査読付き国際・国内雑誌論文や国際会議論文に採択され,また国内会議発表でも好評を得ていることから,学術的に意義が認められている.
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