研究課題/領域番号 |
16H04384
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金子 修 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00314394)
|
研究分担者 |
脇谷 伸 広島大学, 工学研究院, 寄附講座講師 (00728818)
山本 透 広島大学, 工学研究院, 教授 (10200825)
増田 士朗 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60219334)
山本 豪志朗 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (70571446)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | データ駆動制御 / モデリング / FRIT / 内部モデル制御 / 外乱除去 / 安定化 / プロセス制御 / 性能評価 |
研究実績の概要 |
本年は,5つの研究項目に沿って以下の実績を得た.【1】理論や新規手法では,二自由度制御系におけるデータ駆動型応答予測,およびそれに基づく新しい制御器更新法を提案した(29年中に発表予定).また,一般化内部モデル制御等にもデータ駆動制御を展開した.さらに確率外乱で駆動されるデータを用いた制御器調整法としてYoula パラメータを調整する手法や一般化最小分散制御器のパラメータを調整する手法などを導出した.これらはデータ駆動制御理論の基礎を固め広く発展するための重要な成果である.【2】制御器認証や実装に関わる展開では今後につながる基礎的かつ重要な成果を得た.まず,あるクラスの不安定系に対して,感度関数を評価して安定化を図る手法を提案し,安定化制御器認証に関わる基礎的成果を得た.また,データによる性能評価により劣化と判定された場合,制御性能評価指数が向上する方向にパラメータを調整する方法を確立し実験により検証した(29年中に発表予定).【3】クラス・問題の拡大という点でも有用な成果を得た.まず,周波数領域におけるデータ駆動制御器更新法FRITを提案した.また,1入出力連続時間非線形アフィン系に対し,フィードバック線形化制御則のパラメータを直接的に調整を行う方法を提案した.さらに,非線形系に対するカスケード制御系設計法として,データベースを援用したFRIT法による制御器の直接設計法を統合する手法を確立し液位制御実験により検証した(29年中に発表予定).【4】制御とモデルの同時獲得では,あるクラスの不安定極の同定可能性の見通しを得ることで,未解決であった不安定系に関する理論的裏付けを得た点は意義がある.【5】人間技能のモデル化・アシスト化への展開については,モーションセンサを用いて人の振舞データの収集システムを構築しているなど,次年度以降の実験遂行のための重要な準備的な資産を得ている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げた5項目の研究内容のうち,理論展開や新規手法の提案という点では,とくに,二自由度制御系において,データを直接用いた予測や推定法を提案でき,それに基づいた新しい手法を提案できたことは,制御器認証の重要なステップとしての大きな成果である.また,不安定化をしない制御器更新法の基礎を提案できた点も大きな成果である.また,確率外乱を扱うデータ駆動制御に関しても,従来の状況設定を拡大した形で成果を得ている.そして,性能評価を統合したデータ駆動制御について,より汎用化を目指して統合化できた手法が確立できた点は非常に大きい進展である.これらより,データ駆動制御の理論展開および,制御器認証・実装の観点では十分に大きく進展しているといえる.さらに,非線形系についても,フィードバック線形化や,非線形カスケード系など,理論および応用の観点からも大きく進展できており,予定通りである.モデルと制御の同時獲得という点でも,理論的な裏付けとともに,不安定系までも取り入れたより広いクラスの対象にまで拡張できた点も,進展しているといえる.また,初年度はヒューマンインターフェース系の実験は環境整備のみ計画していたため,この方面の実験成果がでていないのは予定とおりである.環境整備という点では順調に進んでいる.以上のような理由より,モデルアウェアなデータ駆動制御の理論展開・実現に関わる主題・各種の拡張に関する主題についておおむね順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
理論の深化や展開という点では,Toeplitz行列に基づいたデータ駆動制御向けのシステム理論を深化させ,制御のしやすさや安定性などの解析手法の提案を試みる.また,データ駆動予測や推定のより進んだ理論解析を行い,初期モデルがどのように影響するかという点に着目して応答予測に基づくデータ駆動型制御の理論構築を試みる.そして,これまでで得られたデータ駆動制御の成果をもとに,汎用的な発展に向けた開発を検討する.また制御とモデルの同時獲得法のさらなる理論解析も統合することで,モデルアウェアなデータ駆動制御の基礎理論の構築をすすめていく. 制御器の認証や実装という点では,安定化についてより実用的な手法の構築を試みる.制御性能評価に基づくスマート適応制御系の設計も検討し,昨年度確立した手法を産業応用することを試みる.また,この実装に際し生じる新たな問題を明確にし,対処法について考察する. クラスや問題の拡大という点でも,前年度に導出した非線形系特性を考慮したデータ駆動型制御器調整法にニューラルネットワークなどの学習機構を取り入れ,制御対象に含まれる非線形項を同時推定する手法の開発に取り組む.そして,ヘリコプター姿勢制御実験装置への適用を行ない,実機応用上の課題抽出とその解決を試みる.また,非線形系へのデータ指向型カスケード制御系の設計についても人間の判断やスキルが制御量となるシステムに対して昨年度確立した手法を適用することを試みる.さらに,ヒューマンスキルに基づくエキスパート制御系の設計用や,データベースとクラスタリング手法を融合した新しいデータ駆動型制御系設計法にも着手する予定である.人間技能のアシストとモデルという点でも,人間動作に応じた内部モデルの検討と構築を行い,モーションセンサで取得できるデータとの関係性について検討する.
|