研究課題/領域番号 |
16H04390
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
重石 光弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50253761)
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研究分担者 |
浪平 隆男 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 准教授 (40315289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射性汚染コンクリート / 放射性廃棄物減容化 / 再生骨材 / パルスパワー / 廃炉 |
研究実績の概要 |
パルスパワーによる再生骨材製造設備の概要:パルスパワーによる再生骨材製造設備は、自動入替装置、充電装置、放電装置および制御装置により構成されている。処理能力は一般的なコンクリートから再生骨材Hの製造で1 t/hであり、天然骨材を用いたコンクリートであれば2 t/hに向上する。既存設備と比較して処理能力が低いが微粉の発生量を低減できるため、微粉処理費の低減が期待できる。最終的には処理能力を10 t/h程度まで向上させられるように現在も開発が進められている。消費エネルギーは一般コンクリートで18 kWh/tであり、砂利コンクリートで9 kWh/tである。 パルスパワーによる再生骨材製造コストの算出:現在の設備の処理能力は2 t/h程度である。原子力施設のコンクリートは天然骨材を用いていることが多いため、パルスパワー再生骨材製造設備の処理能力を2 t/hとした。そのため、1時間あたりの処理能力を満足するように粗骨材で2台、細骨材で2台の合計4台(粗骨材1台と細骨材1台の組合せを1系統とする)を設置するとした。また、パルスパワーは最後に処理水槽に沈下する残渣を再生細骨材と微粉に分ける必要があるため、粒度調整機も設置した。ただし、粒度調整機はパルスパワー製造設備に比べて処理能力が高いため、設置数を1台とした。なお、製造された再生骨材の運搬等の重機はパルスパワーによる再生骨材の製造でも必要と考え、コスト低減対策前の場合と同一とした。その結果、設備費の総額は162,720千円から123,720千円に低減し、減価償却費で表すと20,340千円/年から15,465千円/年に低減した。これは、既存技術では必要であった加熱装置および磨砕機がないためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の調査により、再生骨材の利用が進まない課題として、製造コストが高額であることや発生する微粉の処理などを抽出した。その対策の一つとしてパルスパワーによる再生骨材の製造について検討を実施した。この製造方法は短時間で大電力が発生するパルスパワーを利用した制御破壊により、骨材に付着するペーストの低減効果が期待でき、骨材を損傷させずに回収できることや微粉の発生量を低減できる特徴があることが本年度の研究により明らかにされた。さらに、エネルギーを時間的に圧縮・重畳することによる大きな仕事量を得ることができるため、消費エネルギーを削減できる可能性があることも示した。
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今後の研究の推進方策 |
現在も開発が進められているパルスパワー骨材製造設備はこれまで検証されている処理能力があまり高くないため、廃コンクリートの余剰量が多くなると設備を増やす必要がある。したがって、今後、設備の処理能力が向上し、設置台数を低減できれば作業員の人数を低減できると考えられるため、再生処理費をさらに低減できる可能性がある。また、処理能力の向上とともに余剰量が多くなった場合の対応も可能となる。余剰量が多くなると微粉処理費および輸送費の占める割合が大幅に増加するため、パルスパワーによる製造コスト低減効果がさらに高くなると思われる。一方で、処理能力を向上させたパルスパワーによる再生骨材製造は大きなコスト低減効果を期待できると考えられる。 また、汚染されたコンクリートの本手法による破砕分離によって得られる細粒物中の汚染物質の同定を行う必要がある。本年度の研究では非汚染コンクリートを用いて、放電処理条件と放電回数の違いから回収した骨材の品質の変化を観測し,撹拌機による骨材の分離を行うことで骨材の品質の変化を観測した.撹拌作用による比重の差を利用した素材別分離実験では,水中での撹拌機による回転によって,セメントペーストを多く含む骨材が除去された.低品質な骨材でも撹拌機で分離し,分離後の骨材について密度・吸水試験をしたところ再生骨材H規格を満たすことが判明した.今後は放射能で汚染されたコンクリートに対してパルス破砕を行い,撹拌機で分離して得られる試料の放射線量を調べる必要がある.
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