研究課題/領域番号 |
16H04393
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
川端 雄一郎 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (10508625)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンクリート / アルカリシリカ反応 / 遅延エトリンガイト生成 / 診断 / 性能予測 |
研究実績の概要 |
本研究は,アルカリシリカ反応(ASR)や遅延エトリンガイト生成(DEF)などのコンクリートの内部膨張反応(ISR)を対象として,これらの微細構造の理解に基づき,ISRで劣化した構造物の診断と性能予測の構築を目指し,H28年度では以下について検討した。 (1)診断技術について,DEFの長期暴露試験体について,試料のNMR分析によって,セメント系水和物内でのAlの動態を把握した。また,研磨片を用いたSEM-EDS分析によって,水和物の局所的な生成状況などを把握した。これらの結果を基に,DEFによる劣化機構について推察した。また,試験体を作製し,膨張のモニタリングを開始した。膨張には時間を要し,現時点では膨張挙動は得られていない。(2)ASRの膨張予測モデルについて,既往の数値解析プログラムに新しいモデルを実装した。具体的には,セメント系水和物と空隙水のアルカリ金属イオンの相互作用モデルである。これによりフライアッシュ等をセメントに置換した場合の挙動が解析になった。また,ISRの大枠のモデルについて,研究協力者のF. Toutlemonde博士,J.-F. Seignol博士,R.-P. Martin博士と共同で取りまとめた。本モデルを用いて,過去の実験結果の再現解析を行い,その妥当性について確認した。また,ISRによる損傷を受けたコンクリートの水分移動に関するモデルなど,今後改良が必要なモデルの抽出を行った。(3) 工学的試験法のうちASRに対する試験法について,アルカリ溶液を含んだ不織布でコンクリートを包んで膨張試験を行うAW-CPTについて,長期間暴露された野外コンクリートブロックのデータと比較して本試験法の有用性を検証した。また,DEFに対する試験法について,DEFが生じ得るコンクリート試験体を,コンクリートの空隙水を模擬した溶液への浸漬試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の目標に達しているため,「おおむね順調に進展している」と判断した。 性能予測に関するモデル化については,一部は当初目標よりも進展している。また,本研究の対象とする内部膨張反応に関する実験では膨張の開始に相当な時間を要するため,多くの実験ケースはまだ膨張を開始していない。これは予定通りであり,H29年度以降も予定通り引き続き計測等を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,順調に進展しているため,継続して研究を進める予定である。また,「現在までの進捗状況」で記載した通り,現時点では試験体の膨張が確認されていない。平成29年度も引き続き計測等を進めるが,予定以上に膨張が開始しない場合には,促進倍率を高めた上で,改めて実験を行うことを想定している。
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