研究課題/領域番号 |
16H04394
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 準治 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00594087)
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研究分担者 |
京谷 孝史 東北大学, 工学研究科, 教授 (00186347)
寺田 賢二郎 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40282678)
高木 知弘 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (50294260)
吉見 享祐 東北大学, 工学研究科, 教授 (80230803)
高瀬 慎介 八戸工業大学, 工学部, 講師 (00748808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / マルチスケール解析 / 積層造形 / 結晶性材料 / 剛性 / 靭性最 / 熱伝導性能 |
研究実績の概要 |
H29年度は,前年度の成果をもとにマルチスケール結晶構造最適化法を完成させた.また,本手法のかなめとも言えるMPF法の時間発展方程式については,結晶方位の違いを考慮できる新しいを枠組みを考案し,数値実験をとおして妥当な計算結果が安定して得られることを確認した.計算の効率化・高速化については,寺田らが開発した分離型マルチスケール解析法を導入すれば計算コストを大幅に削減できることはわかっていたが,さらにに解析的変分随伴法による時間発展方程式という新しいアルゴリズムを提案した.ここでいう解析的変分随伴法は,対象とする関数の設計変数に対する勾配を求めるもので,一般的なトポロジー最適化で広く知られた方法である.これを用いて時間発展則の勾配の部分を求めることに成功した. フェーズフィールド法を使った解析の一番の課題は,解析回数増大に伴う計算コストの増大であり,本研究で開発した手法により,2次元問題ではあるが大幅に計算コストを減らすことができた.このアイデアは,加藤が構造最適化の研究をとおして培った発想であり,最適化計算の高速化と同時に種々の金属材料への汎用性についても期待が持てるものとなった. 一方で,H29年度より新たに追加で取り組んだ高熱伝導性能最大化を可能にする金属結晶構造最適化法の構築にも成功した.この手法では,アルミニウムとアルミーシリコン共晶化合物からなる二相合金を想定し,物理的にも妥当な結果が得られた.本成果については国際ジャーナルにも投稿し,すでに採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の得られた知見から,厳密な結晶モデルを結晶構造最適化に導入することをやめ,それに代わる実用的な方法を構築できたことによって,当初考えていた計算負荷が大幅に削減できた.この新たな枠組みの開発により,計算時間を大幅に短縮でき,より多くの数値実験をすることができるようになったことが主な理由であると考えられる. 一方で,ユニットセルの有限要素まわりにおける細々としたコードの最適化を地道に行ったことで無駄のないコードを実装することができた.これらのコードはをtotalviewというバグ取りソフトを使いながら実施しており,研究当初から精度の高いコードを開発してこれたこともその理由のひとつとして考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針は,以下の2つの課題に従って推進することで考えている.まずひとつ目が当初からの研究課題でもあり,最重要課題として位置づけている「強度と延性の同時最適化」である.最終年度は,その課題解決に向けて,初年度の成果のひとつである結晶塑性論に頼らない方法の構築を目指す.具体的には,2002年に国際誌のネイチャーで発表されたWangらの結晶粒の大きさが応力ーひずみ関係に及ぼす影響を考慮した実験結果をもとに,現象論をベースとした手法の開発を目指すことである.結晶方位を考慮した最適化問題の解法についてはH29年度に完成しているので,それらを包括した新しい枠組みの構築を目指す. また,追加の課題としてはじめた高熱伝導性能最大化問題については,フェーズフィールド法特有の曲率の影響が障害となり,初期の結晶配置に依存して安定的に解が得られないことがわかってきた.最終年度は,曲率の影響を減らした新しいモデルを構築し,初期の結晶配置によらないロバストな最適設計法の構築を目指す.
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