研究課題/領域番号 |
16H04397
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北根 安雄 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10444415)
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研究分担者 |
松本 幸大 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00435447)
橋本 国太郎 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40467452)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FRP / FRPボルト / ボルト・接着併用接合 / 接合部耐力 / 設計思想 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,(1)FRP単ボルト二面せん断実験,(2)FRPボルトトルク実験,(3)FRPボルトリラクセーション試験,(4)FRP単ボルト接着併用二面せん断実験,(5)FRPの損傷進展解析用いたボルト接合部の有限要素解析を実施した. まず,昨年度より実施しているFRP単ボルトに面せん断実験では,M16のFRPボルトの曲げ変形が見られたため,今年度はM20のFRPボルトを使用し,実験を実施した.その結果,FRPボルトの曲げ変形を抑制することができ,材料の支圧強度から予想される支圧耐力に対して10%以内の誤差の耐力が得られるようになった. 次に,ボルトトルク実験では,M16のFRPボルトに対する締付トルクと導入軸力の関係を実験的に取得し,使用したM16のFRPボルトの場合トルク係数が約0.07であることを明らかにした.値に期待値に対して90%~120%の間で,保証値に対して最小でも170%の強度を有していた. また,FRPボルトのリラクセーション特性を把握するため,M16,M20,M24のFRPボルトを用いて,27mmまたは36mm厚のGFRP板を標準トルク(34Nm)と標準トルクの約2倍(74Nm)で締め付け,その後の軸力を計測した.報告時点で,約2か月経過しているが,どの試験体においても,締め付け当初に大きく軸力が低下しているものの,それ以降は比較的一定値を保っており,今後も計測を継続する予定である. さらに,引抜成形GFRP部材を用いたFRPボルトによるボルト接着併用接合に面せん断実験を行った.接合部のせん断耐力を向上させるため,接合部領域にDouble Bias Mat (成形後の板厚約1mm)を挿入した接合部実験を実施した.その結果,極めて薄肉のDBMシートを挿入することで,引抜成形GFRPのボルト接着接合部におけるせん断抜けを抑制できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までに,使用するFRPボルトの選定,その強度特性およびリラクセーション特性を把握した.また,FRPボルトを使用した単ボルト接合に関する強度実験を実施し,FRPボルト接合の耐力および力学的特徴を把握した.さらに,引抜成形GFRP部材に対するFRPボルト・接着併用接合について,せん断破壊を抑制する強度向上策を検討し,その効果を確認した. 平成29年度で実施する予定であった接着接合のみの実験は,実施できていないが,供試体の製作は終了しており,平成30年度初めに実施する予定である.また,当初平成30年度実施予定であった,ボルト接合部の有限要素解析は,一部,平成29年度に実施し,FRPの損傷進展解析のベースを確立できている. したがって,平成30年度以降も,現在の研究体制で研究を実施していくことで,当初の研究計画を達成できると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は,Task 5:接着接合を併用したボルト接合の2面せん断実験,Task 6:数値解析によるボルト・接着併用接合の力学的挙動の再現,Task 7:ボルト・接着併用接合の設計思想の提案を実施する予定である. Task5では,接着と併用したボルト接合に対して2面せん断実験を行い,得られる荷重変位曲線や接合部強度・破壊モードが,Task3やTask4で得られたものと比較してどのように異なるか定量的に評価する.その結果,ボルト・接着併用接合の力学的特性が,ボルト接合のみおよび接着接合のみの実験結果から評価可能であるか検証する.実験から以下の事項を明らかにする.(1)併用接合とボルト接合の荷重変位曲線の違い,(2)併用接合での接着破壊強度と,接着接合での接着破壊強度との違い, (3)併用接合での接合部強度(最大荷重)とボルト接合での接合部強度との違い. Task 6では,FRP材料の損傷・破壊を模擬できる材料構成則を非線形有限要素解析に組み込むことにより,ボルト接着併用接合の接合部強度を評価できる数値解析モデルの開発に取り組む.平成29年度にFRPの損傷進展モデルは一部開発済みである. Task 7では,Task3からTask 6の結果に基づいて,FRPボルトを用いたボルト・接着併用接合の接合部強度評価式を検討する.特に,接着破壊強度と接合部強度(最大荷重)の推定を,FRP板の材料特性,FRPボルト強度,接着接合強度から簡易的に行える評価式の確立を目指す.その結果より,ボルト・接着併用接合の使用限界状態として接着破壊を,終局限界状態として支圧破壊またはせん断破壊を定義することで,ボルト・接着併用接合の設計思想を提案する. 研究を円滑に実施するため,研究代表者と研究分担者での研究打ち合わせを年に数回行い,各研究者の研究実施内容の明確化と研究者間での情報の共有化に努める.
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