研究課題/領域番号 |
16H04398
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 哲佑 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80379487)
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研究分担者 |
野村 泰稔 立命館大学, 理工学部, 任期制講師 (20372667)
橋本 国太郎 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40467452)
張 凱淳 京都大学, 工学研究科, 講師 (50751723)
吉田 郁政 東京都市大学, 工学部, 教授 (60409373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 長期モニタリング / 外部因子 / ベイズ / データ正規化 / 損傷実験 |
研究実績の概要 |
本研究は,長期的な経年変化に着目した橋梁異常診断の実現のため,長期モニタリングにおける様々な外部因子(気象状況・構造物の運用状況など)の影響や多種多量のデータを逐次に分析できる異常診断法の構築を目的としている. H29年度は,H28年度に検討した損傷指標と環境因子の損傷指標への影響低減のための多次元自己回帰手法の妥当性検討と異常検知手法の改良について研究を行なった.特に提案手法の妥当性検討のために,実際の鋼板桁橋とPC桁橋を対象とした実橋梁損傷実験と模型橋梁実験を実施した.鋼板桁橋の損傷実験の前に半年程度の長期モニタリングを行った後に,損傷実験を行なっている.計測には加速度の計測とともに橋梁の橋軸方向のたわみ計測,損傷によるひずみの変化を捉えるためのひずみ計測と橋桁の温度の計測を行った.特に損傷実験では安全を考慮し,落橋防止装置を設置し損傷実験を行なった.PC桁橋の破壊実験はあまり例のない実橋の破壊実験であり,安全に万全を期するために事前検討を十分に行い計画した上で実施した.損傷実験は最初の計画より大規模な現地実験となり,膨大なデータの分析ための強制振動抽出アルゴリズムを開発し,データ分析の合理化を図った.また長期モニタリング対象橋の長期モニタリングも引き継ぎ実施した. ベイズ異常検知のロバスト性を高めるために,線形システムモデルの同定にベイズ統計を導入した改良ベイズ異常検知の理論を提案している.また研究成果を積極的に国内外で発信しており,国内学術会議に8件,国際会議に14件,国内外の専門雑誌に7編発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は,以下の項目について,計画に従い研究が実施された. 1)H28年度開発の異常検知法の妥当性検討のための実橋梁実験および模型橋梁実験;2)初年度開発の異常検知法の改良 3)損傷実験のためのモデルアップデートと損傷シミュレーション;4)成果発表と実用化のための問題点分析 具体的に,実際の鋼板桁橋とPC桁橋を対象とした実橋梁損傷実験と模型橋梁実験を実施した.特に,鋼板桁橋の損傷実験の前に半年程度の長期モニタリングを行った後に,損傷実験を行なっている.PC桁橋は破壊実験を行なっている.H28開発の損傷検知法による実橋梁での損傷検知可能性を確認しているが,実験ケースによっては損傷指標のばらつきが観測されており,異常検知法の改良に着手した.ロバスト性のある損傷指標の提案のために,ベイズシステム同定と特徴量抽出の2段階ベイズ異常検知を提案しており,次年度以降の詳細な検討は必要であるものの,損傷検知精度の大幅な向上が期待される.研究成果を積極的に国内外で発信しており,国内学術会議に8件,国際会議に14件,国内外の専門雑誌に7編発表している.以上の理由により現在まで進捗状況はおおむね順調に進展していると判ずる. ただし当初1件の実橋損傷実験計画より多い2件の実橋梁損傷実験を実施することになり,膨大なデータ処理や分析のために損傷実験のためのモデルアップデートと損傷シミュレーションの検討は十分に行われてなく,次年度に引き継ぎ検討することになった.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究結果と課題を踏まえて,最終年度の研究推進について以下の方策を定めることで,研究目標の達成を目指す.1)H29に実施した実橋梁損傷実験の貴重な実験データを活かし2段階ベイズ異常検知法の有効性と実用性について包括的検討を行い,その成果次第に提案手法の特許申請を試みる. 2)長期モニタリングのおける環境因子の逐次低減のために2年間検討を行ったデータ正規化手法の中で橋梁の長期振動モニタリングに適した正規化手法について検討を行う. 3)目視点検との融合をはかるために,目視点検結果のランダム遷移行列とモニタリング対象特徴量のランダム遷移行列を構築し,異なる性質のランダム遷移行列間の相関のモデル化を試みる. 4)研究成果の発表のために,土木学会論文集,Structural Health Monitoring, Mechanical Systems and Signal Processingなどの権威ある学術雑誌に投稿するとともに,国内外の学術会議に積極的に参加し,成果発表に励む.
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備考 |
研究室のホームページから研究業績の「Publication」のページに業績をまとめている.また「Research/Funding(科研費)」のページに関連科研費による研究内容を公開している.
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