研究課題/領域番号 |
16H04399
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十嵐 晃 京都大学, 防災研究所, 教授 (80263101)
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研究分担者 |
古川 愛子 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00380585)
党 紀 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60623535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構造工学・地震工学 / 耐震 / 制震 / 免震 / 防災 |
研究実績の概要 |
2方向地震動入力と漸増動的解析を用いた構造物の耐震性能評価法の開発に関連して,以下の成果が得られた. (1) 曲線橋など非対称性を有する構造物モデルの水平2方向地震動入力に対する動的応答に関して,入力方向を全ての方向に変化させるとともに,2方向入力の2つの位相極性を考慮した場合の最大応答値の評価式を導いた.得られた評価式は,構造モデルにより決まる構造係数と2方向地震動により決まるドット項およびクロス項の積のモード重ねあわせの形式で表されることから,2方向地震動の有するクロス項が重要な意味を持つことが示された.具体的な影響を示すため,簡易な曲線橋モデルを用いた動的応答解析を行い,位相極性の相違により現れる2方向入力に対する応答特性を調べた.対象とした計算例の場合,位相極性によりダンパーの最大伸縮量の評価に1.4倍もの相違が見られた.また,ダンパーによる応答低減効果の評価にも位相極性が著しい影響を与えることを示した. (2) 構造物の2方向応答解析モデルとして,橋脚を2方向挙動を表現するマルチスプリング(MS)モデルと免震支承の2方向挙動を修正Park-Wenモデルを直列に結合したモデルを構築した.このモデルに50セットの地震動記録を用いた水平2方向漸増動的解析を実施し,IDA曲線群を算出するとともに,平均IDA曲線と最小IDA曲線により1方向と2方向地震入力評価による応答評価の相違を検討した. (3)ゴルカ地震を経験したが倒壊は免れたネパール・パタン区にある歴史的組積造を対象に,推定地震動を用いた漸増動的解析を行った.その結果,推定地震動では倒壊しないが,推定地震動の2倍ではネパールの設計基準で許容されている層間変位角0.4%を超過すること,推定地震動の3倍以上では,倒壊の被害が発生することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
成果として得られた,構造物モデルの水平2方向地震動入力に対する動的応答に関して,全ての入力方向・組み合わせを考慮した線形系における最大応答値の評価式は,今後の研究課題での検討の方向性を大きく広げる基本となる成果である.実際への適用を念頭に,弾塑性や非線形性を考慮した漸増動的解析とその設計法への活用に向けて,発展性の大きい検討を進められる状態となった.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 構造物の2方向弾塑性復元力特性モデルに関し,2方向入力エネルギー/吸収エネルギーの観点からの特性の分析を進める.従来より用いられているいくつかのモデルを比較するとともに,既往研究で発表されている実験結果や本課題でのデータを用いて,最も有用性の高い2方向モデルについての検討を行う. (2) 上記の結果を基に,モデルとしてのエネルギー特性と2方向地震動の特性の両者の組み合わせから,2方向応答評価および様々な地震動入力レベルにおける耐震性能評価を行う方法について考察する. (3) 漸増動的解析に関連した検討を進め,フラジリティ解析およびリスクの観点から1方向入力および2方向入力の相違を評価する.
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