研究課題/領域番号 |
16H04401
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山口 隆司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50283643)
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研究分担者 |
高井 俊和 石川工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (00759433)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高力ボルト摩擦接合継手 / 支圧強度 / すべり係数 / テーパー継手 / 打ち込み式支圧ボルト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高力ボルト摩擦接合に最も重要なすべり係数を支配している接合面において,新たな接合面処理により,すべり後に,すべてのボルトが適切に支圧状態に移行することによる強度上昇を活用し,コンパクトかつ高強度・高変形能な高力ボルト摩擦接合継手を開発することである.この継手の開発には,支圧強度を活用するために,①すべり後挙動の解明と②ボルト孔の変形量に基づく変形支圧限界を設計終局限界とする2段階設計法を提案する必要がある.そのためには,多列継手の各ボルト位置でのすべり挙動とすべり後のボルト孔の支圧変形量を一様化させる必要がある. 平成28年度は,新接合面処理の開発に向けた前段階として,母板と連結板の断面形状を軸方向に変化させた山型継手やテーパー継手,多列継手の一部に支圧ボルトを用いた部分支圧接合継手など力学的な観点から各ボルト位置のすべり挙動を一様化する手法をFEM解析で検討した.その結果,テーパー継手および部分支圧接合継手のすべり耐力は,引張・圧縮のいずれに対しても従来継手のそれよりも10%程度上昇した.しかし,これらの方法では各ボルトのすべり挙動および荷重分担率は完全に均等化せず,各ボルト位置でのすべり挙動の一様化のために,新たな接合面処理方法の開発が必要となった.さらに,解析結果の検証と解析上再現できない接合面の塗膜厚や粗さの影響を考慮するため,縮小試験体に対して載荷試験を行った.また,各ボルトの荷重分担を均等化させる新接合面処理用の塗料選定を行うため,塗膜のせん断強度とせん断変形の関係を計測できる冶具も製作した. 載荷試験より,FEM解析と同様の評価方法で算出したすべり耐力は山型継手が解析結果と同様に最大となり,接合面を軸方向に断面変化させることですべり耐力が向上する可能性を示した.ただし,すべり耐力は評価方法にも依存するため,適切な評価法を今後さらに検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は,まず,力学的観点から,多列継手の形状等を変化させることで各ボルト位置でのすべり挙動・荷重分担を均等にできる可能性について詳細に検討することに注力した.そのため,次の段階である新接合面処理の開発に遅れが出ている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,①新接合面処理の開発,②テーパーおよび部分支圧接合継手の性能確認,②すべり後挙動の解明を行う.特に,計画が予定より遅れている新接合面処理の開発に重点置く. 検討する新接合面処理の方法は,円形マスキングシートを用いて母板と連結板の塗膜層内に立体構造を構築し,接合面のせん断強度を各ボルト位置で変化させることで各ボルトの荷重分担率を均等化しようとするものである.まず,マスキング材である円形シートの直径と配置間隔について,接合面状態を再現できる有限要素解析を行い,各ボルト列の分担摩擦力や母板の応力分布からその形状最適化を図る.また,28年度に開発した実験冶具を用いて,塗膜のせん断強度-せん断変形関係を把握し,各ボルトの荷重分担率を均等化させることのできる塗料を選定する.最後に,これらの検討から得たマスキングシートおよび塗料を用いて新接合面処理を施した継手の引張試験を行い,各ボルト位置でのすべり挙動とすべり後のボルト孔の支圧変形量が一様化されるかを実験的に確認する. さらに,継手供試体の圧縮・引張試験を行い,テーパーおよび部分支圧接合継手によるすべり耐力の向上効果を実験により確認する.実験においてその効果が確認された場合,テーパー角度などをパラメータとした有限要素解析を行い,新たな継手構造を提案する. また,すべり後挙動の解明のための研究を推進する.新接合面処理により各ボルト位置でのすべり挙動が均等化した場合のボルト孔の支圧変形量は,継手構造諸元(ボルト配置間隔,板厚,板幅)に支配的になると考えられる.そこで,支圧開始時点を初期状態とした有限要素解析により,支圧強度と継手構造諸元の関係性を明らかにする.次に,m行×n列継手を対象に引張試験および繰り返し載荷試験を行い,群継手のすべり後挙動の解明を試みる.
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