研究課題/領域番号 |
16H04403
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
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研究分担者 |
斉藤 成彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00324179)
高橋 良和 京都大学, 工学研究科, 教授 (10283623)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鉄筋腐食 / 確率場 / 塩害 / 空間変動 / 信頼性解析 |
研究実績の概要 |
既存鉄筋コンクリート(RC)構造物では,コンクリートの品質,あるいはかぶり不足などが原因となり,中性化や塩害による鉄筋腐食が生じている場合がある.このような鉄筋腐食が生じたRC構造物の曲げ耐力やせん断耐力,あるいは靭性能評価を行う際には,構造物の各位置で空間的に変動する鉄筋腐食の影響を考慮する必要がある.X線装置を用いて鉄筋腐食の成長過程を連続的に撮影した昨年の研究成果を見る限り,鉄筋腐食の空間変動性はランダムな現象ながらも,確率場のパラメータを適切に定めることにより,確率統計的に再現可能である.つまり,例えば,平均質量減少率が10%のRC部材の曲げ耐力を予測する場合,部材内に生じ得る鉄筋腐食分布は,ある規則に従っており,その規則を満足する平均質量減少率10%の鉄筋腐食分布を多数作成することにより,このRC部材が発現し得る曲げ耐力分布(確率密度分布)を算定できると期待される. 一方,現状では,鉄筋腐食の空間変動性を考慮した劣化RC部材の有限要素解析において,どの程度の要素幅を用いて解析する必要があるのかの議論は十分になされていない.部材耐力の確率密度分布を正しく評価するために必要な要素幅の設定について検証が必要である.そこで本研究では,まず,電食実験により腐食RCはりを作製し,4点曲げ載荷実験から荷重-変位関係を得る.そして3パターンの要素幅で再現解析を行い,実験結果と比較した.次に,鉄筋腐食の空間変動性をMonte Carlo Simulation との連動が容易なSpectral Representation Method(SRM)を用いて表現した.最後に,SRMによりRCはりの鉄筋腐食分布を再現し,曲げ耐力の確率密度分布を求めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早稲田大学が所有するX線撮影装置を大型RCはり部材も収容およびX線撮影できるようにした改良を終えた.また,RC部材内に生じている鉄筋腐食の様子を可視化する画像処理アルゴリズムの構築を終えることができた.これにより,鉄筋腐食の成長過程を捉えることができる.平成29年度は,平成28年度に引き続き,RC部材の電食を継続するとともに,そのX線撮影を行うことで,腐食の空間分布のモデル化に必要な実験データを当初の予定通りに蓄積できている. さらに,実験結果を再現するための数値解析の高度化も行っている.劣化したRC部材の非線形解析に必要な構成則を劣化の空間変動性を考慮しながら定めている. 平成30年度からは,点検・検査情報を反映して,既存RC部材内に生じている鉄筋腐食を同定する逆問題を解いていくことになるが,それを実施するための基礎検討を終えることができた. このような状況から,当初の計画通りに「概ね順調に進展している」と自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度からは,既存構造物への適用を念頭においた検討をはじめる.鉄筋腐食はRC構造物の耐荷力や変形能を著しく低下させるため,その腐食程度を正しく推定することは,維持管理上の極めて重要な作業となる.橋梁などの土木構造物は,言うまでもなく,規模が大きく,かぶりコンクリートを全てはつり取り,鉄筋腐食量を調査することは不可能である.一方で,鉄筋腐食量の大きさは,場所ごとに大きく異なる.例えば,RC構造物で10m離れた2箇所(A点とB点)から鉄筋腐食量の情報が得られたとき,その両者の値には大きな違いがあり,かつA点とB点の間の鉄筋腐食がどのように変化しているのかは分からない.A点とB点の鉄筋腐食量の大きな方の値に基づき劣化程度を診断することが一般に行われているが,それが安全側の結果を与えているとは言えない. 平成28年度・平成29年度に得られた実験結果を基に,数点の鉄筋腐食量の調査結果から,既存RC構造物内に生じている可能性のある鉄筋腐食分布の提示を試みる.調査点検数に応じて,可能性のある鉄筋腐食分布の絞込みは行われ,その数が増えるほど,既存RC構造物の精緻な安全性評価が可能になると期待される.
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