研究課題/領域番号 |
16H04406
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
桑野 二郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30178149)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 補強土壁 / 耐震性 / 土構造物 / ジオグリッド / 壁面パネル / 損傷度 |
研究実績の概要 |
平成29年度は2年目となり、初年度に整備した補強土壁モデル、土槽、振動台などについて、試験システムの構築を行った。壁面パネルと土槽との間で砂漏れを生じずかつ摩擦をほぼ無くすシステムについては、スポンジゴム薄板を用いてこれまでに無いものを作製した。また、裏込め地盤内のひずみ分布を計測するための画像解析については、デジタルカメラとデジタルビデオカメラを土槽に対して固定することで、傾斜実験中や振動台実験中においても、傾きや歪みのない画像を取得し、精度良くひずみ分布を計測できるようになった。 上記のように、精度の高い実験システムを構築したうえで、平成29年度はまず傾斜実験を実施し、耐震設計時に広く用いられる水平震度と壁面傾斜の関係を求め、補強材の長さ、硬軟の異なる場合でも、壁面傾斜が2.5%に達するとその後傾斜は急増し補強土壁は崩壊に至ること、またこの壁面傾斜は裏込め土のせん断歪との対応があるという既往の研究を参照してひずみ分布を検討したところ、裏込め土のせん断破壊(すべり面の形成)に対応していることが示された。さらに振動台実験も同様な条件で実施したところ、振動台実験においても傾斜実験と同様に壁面傾斜とすべり面の形成についての関係が得られ、震度法が補強土壁の耐震性評価に有効であることが示された。 実際の補強土壁は建設時に多少の傾斜は許容されており、地震直前の状態が明らかでないことが多い。地震後に見つかった壁面傾斜が地震によるものなのか、あるいは建設当初からのものなのか、不明な場合も多くみられる。本年度の研究では建設時の初期壁面傾斜の影響を見るため、当初から少し壁面が傾斜している補強土壁模型を作製し、傾斜実験と振動台実験を実施した。その結果、初期傾斜に関わらず、壁面傾斜の増分が被災度の指標となることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
壁面パネルと土槽との間で砂漏れを生じずかつ摩擦をほぼ無くすシステムの構築に思ったよりも時間がかかった。また当初予定していなかった、壁面が建設時から傾斜している場合の損傷度についての検討が必要であると認識されたため、その分、被災後の残留強度の検討までは至らなかった。ただし、平成30年度内には十分にリカバリできる程度の遅れであると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
上記のごとく、傾斜や振動により補強土壁をある程度被災させた上で、再度傾斜や振動を作用させることで、被災した補強土壁の残留耐力を検討する。さらに、被災後の補修方法についても検討をする。実験システム等は既にできており、研究は着実に進むものと思われる。
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