2019年度は最終年度であり、既存の補強土壁を補強する工法としてネイリング工法に関する実験を実施するとともに、研究成果の取りまとめと公表を行った。これまでに地震動や降雨などの過大外力によるジオグリッドにより補強土された補強土壁の挙動を調べるため、補強土壁模型についての振動台実験や傾斜実験を実施してきた。その結果、補強領域の背面を通るほぼ鉛直な面と補強領域が一体となった分厚い擁壁の転倒に伴うさらに背後の領域のすべり破壊が確認され、壁面の傾斜が損傷度の指標となるなどの結果を得てきた。かなりの程度の損傷は受けているものの過大な変形には至らず、適切な補修を行って十分な安定性を確保することが、経済的で速やかな機能回復につながる。ジオグリッドは初期の建設時には敷設が容易で盛土の一体化を図り安定性を向上させるのに大変効果的であるが、既設土構造物の内部に後から敷設することは難しい。そこで既設構造物でも提要可能なネイリング工法について、挿入位置、挿入長などの影響について振動台実験を実施し、その補強の効果を調べた。適切な位置に十分な長さの挿入を行えば、補強土壁の安定性は必要十分な向上を示すという結果が得られた。これらの成果の一部は学術雑誌や会議論文として公表しており、また査読中の論文を含め2020~2021年度に公表を行う予定である。
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