研究課題/領域番号 |
16H04407
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内村 太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60292885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 斜面防災 / 弾性波 / 早期警報 / 野外実験 / 模型実験 |
研究実績の概要 |
平成28,29年度は、次の研究を行った。 1.不飽和土の弾性波の伝播特性についての要素実験と結果の整理:斜面を構成する不飽和土の三軸供試体で、含水比の変化とせん断変形に伴う弾性波速度の変化を測定した。 2.斜面内部および表層の弾性波の伝播特性の模型実験:小型の水平な地盤模型を用いて、地中に埋めた電磁石による打撃装置から弾性波を発して、地表の振動センサーで捉えて、同時を測定した。また、弾性波探査(屈折法)の要領で、地表面の1測線上に振動センサーを配置し、地表の1点を電磁石を使った装置で叩くことで、弾性波の伝播の走時を測定した。地表に人工降雨を与えた場合、底部から注水して地下水位を上げた場合について、水分量に応じた弾性波速度の低下を測定した。また、模型を傾けてせん断変形を起こし、それに応じた弾性波速度の低下を測定した。最後に、最初から斜面模型に降雨を与え、水浸とせん断変形に同時に起こる、実斜面に近い条件での弾性波速度の低下を測定し、前2者の結果との整合性を確認した。 3.野外での弾性波電波の測定:熊本地震で亀裂の入った阿蘇外輪山の斜面で、年間4回にわたり、表層の弾性波測定を行った。時間の経過や条件の変化に応じた弾性波の伝播速度と減衰を観察した。また、自動化による継続的な測定を念頭に、打撃エネルギーの違いによる変化も確認した。また、人為的な加振の代わりに、地盤の常時微動を信号の発生源として用いることも考慮して、現地の常時微動の測定も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
斜面を構成する不飽和土を伝わる弾性波の伝播特性について、速度だけでなく、減衰についても注目して、雨水の浸透と変形による変化の特徴を捉えることができた。また、熊本地震で亀裂の入った阿蘇外輪山の斜面での定期的な観測を実施し、自動化された継続的な計測による斜面監視を行う準備ができた。これまでに、修士2名、博士1名の学生が卒業し、2017年度には新たに査読付き論文3編、国際会議1編、国内会議3編の発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、次の研究を行う。 1.斜面内部および表層の弾性波の伝播特性の模型実験: これまでに続いて、小型の水平/傾斜地盤模型を用いて、人工降雨の水浸およびせん断変形による弾性波伝播特性の変化を測定する。模型の表面および内部に、振動センサーを多数配置して、弾性波がどのような経路、速度、方向に伝播しているかを詳細に調べる。この結果から、斜面の状態把握に有効な測定方法を検討する。 2.野外での弾性波加振/測定装置の開発と実斜面での試用:野外で、長期にわたり乾電池および太陽電池で動作し、自動的に地表を加振して振動の電波を測定する装置を開発する。また、常時微動の測定装置も開発する。熊本地震で亀裂の入った阿蘇の斜面など、実斜面での検証を行う。
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