研究課題
浸透条件下の盛土構造物の崩壊機構を解明し,合理的な設計・照査法を提案することを研究の目的とし,研究初年度の平成28年度は,浸透時の有効応力の変化と浸透による細粒分流失に伴う粒度変化に着目し,礫質土を含む盛土材料の力学挙動の変化について三軸試験を用いて検討を行った。研究2年目の平成29年度においては,平成28年度に引き続き,排水条件にて初期せん断を与えたのちに,軸差応力一定条件下で,間隙水圧を上昇させて限界条件に至らしめる三軸試験,すなわち吸水軟化試験を数多くの試験試料にて実施し,その適用性について検討を行った。礫質土試料においても,現場密度と粒度を十分に把握した上で,吸水軟化試験を実施することにより,斜面法面を想定した低拘束圧条件下におけるせん断抵抗の評価を適正に行う方法について検討を行った。さらに平成29年度は,前年度に整備を進めた浸透条件下でせん断を実施できる試験装置を用いて,せん断中に細粒分が流失する様子の観察を行い,せん断と粒子移動との因果関係についてミクロレベルでの考察を行った。すなわち,せん断をしていない状態では,浸透場においても細粒分の流失はほとんど見られないのに対して,せん断を開始すると粒子間に入っていた細粒分がせん断の進行とともに流失していく様子がハイスピードマイクロスコープを用いた観察によって,ミクロレベルで確認することに成功した。一方,解析的な研究としては,平成29年度は浸透条件下における盛土の崩壊を予測するFEM解析手法を開発した。複雑な浸透条件を飽和-不飽和浸透流解析を用いて設定した上で,極限定理を用いた剛塑性有限要素解析によって,崩壊時の斜面の安全率を精度良く求めることに成功した。特に複雑な浸透条件においては,本開発手法のような真の連成解析でなければ真値は求められないことも併せて示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
浸透条件下における盛土材料の力学挙動について,吸水軟化試験を用いることによって,低拘束圧条件下での地盤材料の強度特性の評価手法の整備が一層進み,合理的な設計法の構築に向けては着実に進展している。浸透条件下でのせん断に伴う細粒分流失機構とせん断特性の把握については,開発したせん断試験装置を用いて,ミクロレベルでの解明が進展しつつある。また,浸透条件下での斜面崩壊を予測するFEM解析法の整備も進展し,各種の事例解析を実施している。
概ね順調に研究が進行しており,前年度に引き続いて各種の実験的研究を進める。浸透条件下でのせん断試験に関しては,実験事例をさらに増やして,精度向上ならびにせん断特性と細粒分流失との関係性について明確な知見を得られるように実験を進める。また,前年度開発した解析手法を,さらに各種の解析事例のシミュレーションを通して,高度化をはかると伴に,各種の実験で得られた知見をモデル化に取り込むことによって,合理的な設計法・照査法の構築に向けて研究を遂行する。
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河川技術論文集
巻: 24 ページ: 印刷中
Proc. of ICSMGE
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http://civil.meijo-u.ac.jp/lab/kodaka/index.htm