研究課題/領域番号 |
16H04413
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
中澤 博志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 主幹研究員 (20328561)
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研究分担者 |
Hemanta Hazarika 九州大学, 工学研究院, 教授 (00311043)
田端 憲太郎 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 主任研究員 (30282958)
末次 大輔 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30423619)
原 忠 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80407874)
張 浩 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90452325)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地盤防災 / 蛇籠 / 擁壁 / 模型実験 / 実大模型 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
蛇籠を用いた耐震性擁壁の開発を目的に、中詰土の粒子配列、蛇籠の変形性能に着目し、H28年度は以下に示す5項目について研究を実施した。 (1)蛇篭の利活用と地震被害に関する調査では、国内外における蛇籠の利用実態と斜面崩壊等に伴う道路擁壁被害に関する文献調査と現地調査を行った。対象は、2004年新潟県中越地震において、斜面崩壊等が顕著であった新潟県内の利用実態および2015年ネパールゴルカ地震における利用あるいは被害および被災原因等を把握し、直立に蛇籠を配置した擁壁に被害が多いことを確認した。 (2)室内要素試験による中詰土のせん断特性の評価において、蛇篭の中詰土に対する室内要素試験を行い、粒子形状と粒子配列等の違いによるせん断特性を調べた。角礫と円礫による三軸試験の結果、円礫による粒子構造の方がせん断抵抗が大きく、また、角礫は、せん断時に角が取れる粒子破砕が発生し、間隙に詰まることで透水性を損なう可能性があることを把握した。 (3)小型模型実験による蛇篭擁壁の変形特性評価では、ミニチュア蛇篭を作製し、変形拘束効果と蛇籠同士の緊結効果の検証を行った。その結果、緊結有かつ密詰めの方が水平抵抗が大きいこと、緊結部が破断すると水平抵抗は著しく減少すること、および密詰めの方が粒子破砕が多いことを確認した。 (4)解析モデルの構築では、要素試験および小型模型実験結果に基づき、粒子配列とせん断抵抗をパラメタとするミニチュア蛇籠の再現数値解析をFEMにより実施・検証した。再現解析の結果、番線の拘束効果を考慮した解析モデルを提案することができた。 (5)H29年度に向けての予備実大実験を行い、三段直壁による蛇籠擁壁の地震時挙動を把握した。ネパールで確認された被災後残留変形の再現と評価を行い、実大規模模型実験に向けて、必要な計測・調査項目を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H28年度の計画に関し、(1)蛇籠の利活用と地震被害調査、(2)室内要素試験による中詰土および蛇籠単体のせん断特性の評価、および(3)室内蛇籠擁壁実験による地震時耐震性の検証の3項目について計画されていた。 (1)については、海外被災事例調査は詳細に行うことができたが、国内における蛇籠の利用実態に関しては、新潟県の事例に関する資料調査に手間取り冬季に差し掛かったため、現地調査が困難となった。また、(2)、(3)については、当初の想像以上に進展し、蛇籠のせん断特性を詳細に把握し、数値解析モデルを構築でき、H29年度に向けて、予備的に実大規模模型実験を実施することができた。 上記を総合的に見て、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の(1)蛇籠の利活用と地震被害調査のうち、蛇籠の国内被害事例に関しては、新潟県内の被災現場が資料調査よりわかっていることから、H29年度中、雪解けを待って、現地調査に行きたいと考えている。 また、H29年度の計画では、(1)室内要素試験による中詰土のせん断特性の評価、(2)ミニチュア蛇籠の小型模型実験、(3)実大規模模型実験による地震時耐震性の検証、(4)数値解析による被害の再現が計画されている。(1)、(2)については、実験条件を変えるものの、実施方法は変わらないこと、(3)は、H28年度に予備的に実験を実施し、H29年度の実施方法が決まっていること、および(4)は数値解析モデルが構築されている。したがって、今後の研究計画を当初通り変更なく、また、研究推進上、問題なく実施できると判断している。
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