| 研究課題/領域番号 |
16H04422
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| 研究機関 | 芝浦工業大学 |
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研究代表者 |
宮本 仁志 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50283867)
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| 研究分担者 |
戸田 祐嗣 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60301173)
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30448584)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 河川樹林化 / 河川管理 / 環境水理学 / 水工学 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では、河川の樹林化問題に対して洪水後の初期再生過程に焦点を絞り、現象の実態把握と再生機構の検討を行っている。２年目の研究実績の概要は以下のようである。
１）現地観測による初期再生過程の実証的把握：初年度に引き続き、鬼怒川において樹林化河道の再生過程をモニタリングした。観測結果をもとに、鬼怒川中流部を対象にロジスティック回帰分析による草本侵入の要因分析を行った。その結果、過去の植生履歴、無次元掃流力・比高、水際からの距離の順で草本の侵入への影響が大きいことが明らかになった。さらに、河道内植生の裸地への侵入のきっかけとなる種子供給に着目し、裸地砂州における定期的な埋土種子調査を行った。これは三重県・鈴鹿川を対象河川にしたものであり、UAVによる地被調査、土壌サンプリングによる埋土種子、土砂粒度調査を実施した。その結果、裸地砂州の水際および砂州表面の砂堆背後で埋土種子量が大きくなることが明らかになった。
２）GIS分析による初期再生過程の解明：日本全域を対象にGIS および分布予測モデルを用いたヤナギ類の潜在的生育地の推定を行った。算出された潜在生育地と実際のヤナギ類の分布データを照らし合わせることによって、樹林化の管理目標設定、要因分析に利用可能なベースマップの作成をおこなった。さらにベースマップにおいて樹林化しやすい場所と分類された島根県高津川中下流域を対象として樹林化の要因を検討した。
３）解析モデルによる樹林化基本機構の解明：洪水インパクトや植生進入の不確実性を考慮した数理生態学ベースの確率論的モデルを用いて、鬼怒川下流部の複数河道における樹林化傾向の分析を行った。その結果、鬼怒川下流部における植生の成長・参入は比較的小さいことがわかった。さらに、河道断面間で樹林化傾向の確率評価を行った結果、鬼怒川下流部では上流から下流側にかけて樹林化傾向が増加することが確認された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、１）現地観測、２）GIS分析、３）モデル解析を実施し、総合的に研究目的を達成する目論見であり、これまでの２年間は、ほぼ計画通り順調に研究が進捗したと考えている。研究過程において、当初は利根川水系の鬼怒川のみを対象河川としていたが、新たに、高津川・鈴鹿川・黒部川などを比較対象河川として計画に組み入れ同様の観測・分析を行ったこと、ロジスティック回帰分析を新たに導入して植生初期侵入の要因分析を行ったことなどは、計画を遂行する上での積極的な改善点と考えている。さらに、モデル解析に関しては、数理生態学ベースの確率論的モデルを用いて、高津川など新しく検討に取り入れた河川の解析準備も進めている。以上より、２年目の本年度もほぼ計画通り、順調に研究が進展したと判断している。
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| 今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策としては、以下の３つの内容を主に検討する予定である。
１）現地観測による初期再生過程の実証的把握：これまでに引き続き、鬼怒川において樹林化河道の再生過程をモニタリングする。また、新しく検討対象河川に組み入れた高津川・鈴鹿川・黒部川などの樹林化河道においても同様の現地観測を実施し、樹林化初期再生過程に関する河川間比較を行う。また、定期観測に加えて、砂礫州・高水敷が冠水する規模の洪水があれば、その直後に非定期観測を実施する予定である。観測項目は、空撮用ドローンを用いた河道地形測量と河川植生分布調査および河床材料調査、埋没種子調査などである。
２）GIS分析による初期再生過程の解明：GIS分析の検討は、蓄積されていく現地観測・モデル解析結果のデータベースを用いて、セグメント・リーチ・河川地先のような河川の空間階層構造のなかでどの空間スケールが樹林化再生過程の特徴を的確に捉えるのかを検討する。特に、樹林化河道再生過程のセグメント間の違い、セグメント内でのリーチ・河川地先間での類似点と相違点、再生過程の経時変化特性を相関分析など統計解析を用いて検討する。さらにその結果より、樹林化の初期再生過程において河川工学上重要となる空間スケールを対象水系ごとに検出できれば良いと考えている。
３）解析モデルによる樹林化基本機構の解明：これまでに引き続き、土砂水理学ベースの力学的・決定論的モデル、および数理生態学ベースの確率論的モデルを併用して検討を進める。樹林化の再生初期過程の基本機構が、どの程度力学的・決定論的に規定されているのか、もしくは砂州・河川地先ごとにばらつきをもつ確率過程に規定されているのかをモデル解析結果を用いて明らかにする予定である。
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