研究課題
本研究では、河川の樹林化問題に対して洪水後の初期再生過程に焦点を絞り、現象の実態把握と再生機構の検討を行ってきた。最終年度である今年度の主な研究実績は以下のようである。1)現地観測・分析:これまでに引き続き、鬼怒川・鈴鹿川・黒部川で樹林化河道の再生過程をモニタリングした。鬼怒川では、高解像度のUAVデータがGISのシェープファイル形式で保存され、上中下流の約100km区間における礫床・砂州を対象にして、大規模洪水後4年間の樹林化再生過程のデータアーカイブが作成された。多変量解析を用いた草本侵入の要因分析では、過去の植生繁茂の履歴に加えて底面せん断力・比高差など流れの物理条件が草本侵入に大きく影響していた。一方、鈴鹿川では、UAV写真に画像解析を適用し、植生の初期侵入・再萌芽箇所の詳細な空間分布を把握した。埋土種子と発芽植生の調査結果を比較したところ、種子供給特性によって植生初期侵入の可能な場が選択されるが、実際の発芽・侵入は発芽に適切な物理条件が満たされる個所で生じることが明らかになった。2)モデル解析:高津川・加古川の複数河道を対象にして、洪水インパクトや植生侵入の不確実性を考慮した数理生態学ベースの確率論的モデルにを用いて樹林化傾向を分析した。高津川は洪水インパクトが相対的に小さく、また加古川の方が植生の成長・参入は比較的活発なため、両河川の樹林化傾向に差異が生じることがわかった。3)モニタリング技術の開発:黒部川の礫床河川を対象にして、機械学習などAI技術とUAV画像・衛星画像を用いた河川地被状態の自動判別アルゴリズムの開発を行った。高解像度のUAV画像と高頻度の衛星画像の併用が地被判別の精度向上に有効であることがわかった。さらにマルチスペクトル画像を利用した河川植生の把握可能性を検討した。NDVIにおけるRedEdgeの使用が植生域の判別に効果的なことが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Hydro-environment Research
巻: 30 ページ: 3-13
doi.org/10.1016/j.jher.2019.09.003
土木学会論文集B1(水工学)
巻: 75(2) ページ: I_667-I_672
巻: 75(2) ページ: I_331-336
河川技術論文集
巻: 25 ページ: 199-204