研究課題/領域番号 |
16H04423
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
田村 仁 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (80419895)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | さざ波観測 / Lバンド波数帯 / エネルギーバランス / 海上風乱流 / WAVEWATCHIII |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,さざ波の物理現象ならびにその変動を支配している力学過程を解明し,SAR衛星画像から特定の海面物理パラメータを定量的に評価することが可能なSAR衛星シミュレータを構築することである.一方で,卓越する風波の上に乗る極微小のさざ波を現場海域で直接観測することはきわめて困難であり,SAR画像の工学的利用への大きな障壁となっている.平成29年度は前年度に開発した観測システムを用いて,平塚海洋観測タワーでのさざ波観測を再度行うとともに,数値海洋波浪モデルの開発を引き続き行った. さざ波観測の展開では,海表面でのLバンド波数帯の海面変動およびエネルギーバランスの詳細を把握するために,波長20cmまでを解像するさざ波の現地観測を平塚海洋観測タワーで行った.得られた水位データからDonelan et al(1996)によるWavelet変換を用いた波数スペクトル推定手法を用い二次元波数スペクトルの推定に成功した.これらの結果は平成28年度の観測結果および既往研究で得られている飽和スペクトルと定量的に整合性のある解析結果となっている.また,同様の観測システムであるマイアミ大学のASISブイデータ解析を行い,海上風乱流とMSSに関してデータ解析を行った. 数値海洋波浪モデル開発では,ALOS-2を対象とした「SAR衛星シミュレータ」の開発を進めた.モデルにはアメリカ海洋大気局が開発したWAVEWATCHIIIを使用し,さざ波現地観測によって得られるLバンド波数帯における物理過程をモデルに取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り平成29年度はさざ波観測の海域展開を行う予定にしていたが,観測開始の直前に台風第21号が超大型の強い勢力で静岡県御前崎付近に上陸した(2017年10月23日).その影響により観測プラットホームとしていた平塚観測タワーが大きな損傷を受け観測を延期せざるを得なくなった.また,その後の冬季風浪の影響で観測は2018年3月末まで延期することとなった.さらに設置後(2018年3月28日)に関しても南岸低気圧の通過を回避するため観測を1週間程度で終了せざるを得なかった.一方で,平成30年度に予定をしていた測位衛星(GNSS衛星)との同時観測が行えたことから本研究課題の進捗状況に関しては,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度および29年度に観測を行ったさざ波観測のデータ解析を進める.現地観測およびSAR衛星観測の知見を基に,高波数スペクトル領域での風からのエネルギー入力,成分波間相互作用,粘性・砕波散逸に関してパラメータ化することでさざ波エネルギーの定量的評価を行う.また、ALOS-2/Lバンドレーダ方程式からBragg共鳴散乱成分を推定し,加えて砕波散逸成分をモデルに取り込むことで「SAR衛星シミュレータ」を開発する.ALOS-2/SAR画像から得られる後方散乱強度をシミュレータからの推定値と比較することで,その妥当性を検証するとともにSAR画像に反映される物理量の定量的評価を行う.
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