平成28年度および29年度に神奈川県・平塚海洋観測タワーで行ったさざ波観測,および1999年にアメリカ東海岸(North Carolina沖)で行われた観測プロジェクトSHOWEXの際に計測された海上風乱流および水位変動の現地観測データ解析を行った.特に,データ解析では高波数スペクトル領域でのエネルギーバランス(風からのエネルギー入力,成分波間相互作用,砕波散逸など)に関して着目した.その結果,高波数成分に対応する水位の平均二乗勾配は海上風乱流の代表スケールである摩擦速度に比例することが確認された.これは風波に関してTobaスペクトルを仮定した際の海上風乱流と海面粗度の関係に関する帰結であり,それを支持するものである. SAR衛星シミュレータ開発に関してはWAVEWATCHIIIv4.18(WW3)をベースに高波数成分領域を診断するスペクトルモデルを構築し,現業運用可能なシステム構築を行った.波浪モデル内での高波数領域エネルギーバランスにおいてDonelanによる非線形散逸項を用いたが,これには検討すべき課題が残されている.一方,システムでは任意に設定された計算期間から海上風外力(ここではNCEP/CFSRおよびJMA/MSM)を取得し,ネスティングされた日本沿岸をカバーするWW3モデルを用いて波浪場を計算することが可能となっている.ALOS-2/SAR画像から得られたる後方散乱強度をシミュレータからの推定値と比較することで,その妥当性を検証することが今後の課題である.
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