研究課題/領域番号 |
16H04424
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
萩原 亨 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60172839)
|
研究分担者 |
多田 昌裕 近畿大学, 理工学部, 講師 (40418520)
濱岡 秀勝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70262269)
二宮 芳樹 名古屋大学, 未来社会創造機構, 寄附研究部門教授 (70394525)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自動運転車 / 運転行動 / 運転リスク |
研究実績の概要 |
自動運転により、交通事故件数の減少、ドライバの疲労軽減などが期待されているが、ドライバがシステムを過信しすぎることで、事故を回避できないという恐れがある。完全な自動運転でない以上、事故の責任は人間が持つため、ドライバは常に周辺に注意を払う必要がある。そこで本研究では、現在普及している準自動運転を想定した仮想運転環境を構築し、ドライバがシステムを過信せず、事故を回避する運転ができるのかについて調査した。 本研究の仮想運転環境は、FORUM8のUC-win/Road Ver.11.1.0(ドライビングシミュレータ)を用いて構築し、実験区間として北海道の苫小牧東IC~恵庭IC(全長約23km)を作成した。65~75歳の高齢者16名、19~22歳の大学生18名の計34名が実験に参加した。実験参加者は、前方へ割り込む車両やICで流入する車両の有無、それらの車両が発生するタイミングが異なるコースを複数回走行した。 実験の結果、高齢者が流入車両を回避しようとした際に、31%が咄嗟に走行モードの切り替えができない「切り替え失敗」であり、システムを正しく使用することが出来なかった。高齢者は流入車両を回避するのに31%が「減速」した一方で、「加速」した者はおらず、必ずしも状況に応じた行動がとれていないことがわかった。一方、若者は、流入車両を回避するために17%が「減速または減速とハンドル操作をした」、22%が「加速または加速とハンドル操作をした」を選択した。このことから、状況に合わせて減速と加速を使い分け、流入車両を回避していたことが示唆された。しかし、流入車両が近づいてきても44%が流入車両を回避しない「無操作」を選択しており、システムを過信しがちであることが示唆された。 準自動運転とすることから、それにより起きる状況に応じた行動がとれないケースが発生しており、新たなリスクとなりえることが本研究から明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公道上で自動運転システムを搭載した車両(以降、レベル2)が多くなりはじめている。レベル2の自動運転システムを搭載した車両の普及は、道路の効率的な利用や事故減少に寄与することが期待されている。一方、レベル2の車両を運転中、ドライバは周囲やシステムの監視タスクを分担し,いつでも短時間で全運転タスクを受け取れるように常に準備していなければならない。しかし,レベル2利用において、ドライバの覚醒度が低下したり、過信が起こりやすく、新たなリスクとなる可能性がある。そこで、以下を目的とし研究を実施している。1)実車を用いた自動運転システム(レベル2)の受け入れに関する研究、2)ドライビングシミュレータを用いた自動運転システム(レベル2)の利用時におけるリスク評価。 1年目の研究から、ACC車の体験走行により,多くの高齢運転者の運転支援装置に対する受容性・安心度は高くなった.その一方で,ACCのシステムOFFが運転支援装置に対して信頼感を持てない原因となり受容性・安心度が高くならなかった場合が見られた.走行体験の機会が受容性を高めることになる可能性を示唆できたが,体験時の運転支援装置を正しくかつエラーなく使ってもらう一層の工夫が必要と言えた. 2年目の研究から、ドライビングシミュレータにより仮想運転環境を構築し、65~75歳の高齢者16名、19~22歳の大学生18名の計34名が、前方へ割り込む車両やICで流入する車両の有無、それらの車両が発生するタイミングが異なるコースを複数回走行した。準自動運転とすることから、それにより起きる状況に応じた行動がとれないケースが発生しており、新たなリスクとなりえることが明らかになった。 前述の目的に対応する結果を得てきたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ドライバの自動運転システム(レベル2)による周辺認知状況の低下による事故リスクの発生を軽減するための対策を検討する。具体的には、高速道路のインターセクションにおける合流車とのリスクについて明らかにする。ドライビングシミュレータを用い、自動運転時におけるドライバの周辺認知状況の低下を再現し、合流部におけるリスクの発生を軽減する情報提供とそのタイミングを計測する。ドライバの周辺認知状況の低下は、ドライバモニタと主観的評価(アンケート)を用いる。 これまでの3年間の研究成果をもとにドライバの自動運転システム(レベル2)利用時のリスクをまとめる。また、この中で、そのリスクを低減する道路側からと自動車側からの対策について示す
|