集積の経済性を考慮した国土強靱化施策の影響分析と「幅広い」便益の計測

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H04428
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 織田澤 利守 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30374987)
• 研究分担者: 多々納 裕一 京都大学, 防災研究所, 教授 (20207038) ; 小池 淳司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60262747)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 土木計画 / 産業集積 / 災害脆弱性 / 便益評価

研究実績の概要

本研究の目的は，(A)災害による 間接的被害の波及過程における産業集積の負の効果を明示的に考慮した分析枠組みを構築し，社会的厚生及び災害脆弱性の観点から均衡産業立地構造の性質や防災・減災施策の影響について分析を行うこと，(B)災害リスクと集積の経済を同時に考慮した，防災・減災施策による「幅広い」 便益の計測法を提案すること，(C )我が国の現状を踏まえた数値事例分析に基づき，災害に強い産業立地構造の在り方について考察することである．平成29年度は，これまでの枠組みを拡張し，中間財を明示的に考慮したモデルを構築し，地域間交通インフラの防災・減災投資が均衡産業立地構造に与える影響が集積の経済性の強さに応じて異なることを数値計算を通じて明らかにした．その上で，次善経済における便益計測式である Harberger(1964) の公式を適用し，集積の経済下における防災・減災施策の便益を整理した．具体的には，伝統的な費用便益分析において直接効果として計上される3便益に加え，企業立地変化に伴う便益（不便益），総企業数の変化に伴う便益（不便益），企業の倒産に伴う不便益を計測する必要があることを明らかにした．上記の成果については，既に学術論文集に投稿済みである．この他に，震災直後の交通施設復旧施策とその経済的な影響分析に関する論文（小池他, 2017）や道路ネットワークのレジリエンスの計量化に関する論文（多々納, 2017）など道路の防災機能の評価手法に関する論文を学術論文集に掲載している．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度には，中間財を明示的に考慮した分析を実施し，被災時の間接的被害の発生・波及構造を踏まえた交通インフラの減災便益計測式を導出した．以上の成果を学術論文として取りまとめ，現在，土木計画学論文集に投稿中である．また，道路システムが有すべき防災機能として，レジリエンス（強靭性）やリダンダンシー（冗長性）の概念を整理し，それらを評価する手法について研究を進めた．成果の一部は，既に学術論文集に掲載されている．以上より，現時点で本研究は概ね順調に進展しているといえる．

今後の研究の推進方策

平成30年度は，当初計画に従い，我が国の現状を踏まえた数値事例分析に基づき，災害に強い産業立地構造の在り方について考察する予定である．現状の交通インフラ，災害リスク，産業立地構造を踏まえた防災・減災対策シナリオを設定し，数値事例分析を行う．その上で，社会的厚生，災害脆弱性の観点から，防災・減災対策の影響を分析するとともに，提案した便益計測式に基づき「幅広い」便益の計測を行う．平成30年度は最終年度にあたるため，これまでの研究成果を取りまとめた上で，政策的な提案を行うことを目標とする．また，今後の研究の発展に向けて，残された研究課題の整理を行う．

研究成果

• [雑誌論文] Applicability of a spatial computable general equilibrium model to assess the short-term economic impact of natural disasters (2018)
  • 著者名/発表者名: Kajitani Yoshio、Tatano Hirokazu
  • 雑誌名: Economic Systems Research 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: https://doi.org/10.1080/09535314.2017.1369010
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 震災直後の交通施設復旧施策と経済影響分析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 小池淳司・宮本佳直・右近崇
  • 雑誌名: 土木学会論文集D3 (土木計画学) 巻: 73(5) ページ: I_147-I_161
  • DOI: https://doi.org/10.2208/jscejipm.73.I_147
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 集積の経済性を考慮した交通基盤整備の影響分析及び便益計測に向けた検討 (2017)
  • 著者名/発表者名: 足立鷹祐，織田澤利守
  • 雑誌名: 第56回土木計画学研究発表会・講演集 巻: 56 ページ: 12(CD―ROM)
• [雑誌論文] 道路ネットワークのレジリエンスの計量化に向けて (2017)
  • 著者名/発表者名: 多々納裕一
  • 雑誌名: 高速道路と自動車 巻: 60(9) ページ: 5-8
• [雑誌論文] Development of a CUE Model Considering Heterogeneous Households (2017)
  • 著者名/発表者名: 5.YAMAMOTO Hiromichi, KOIKE Atsushi, MIYAMOTO Yoshinao, TOMOKUNI Masashi
  • 雑誌名: The Journal of the Eastern Asia Society for Transportation Studies 巻: 12 ページ: 1143-1162
  • DOI: https://doi.org/10.11175/easts.12.1143
  • 査読あり
• [学会発表] 集積の経済性を考慮した交通基盤整備の影響分析及び便益計測に向けた検討 (2017)
  • 著者名/発表者名: 足立鷹祐，織田澤利守
  • 学会等名: 第56回土木計画学研究発表会
• [学会発表] 道路システムのレジリエンス (2017)
  • 著者名/発表者名: 多々納裕一
  • 学会等名: 防災計画研究発表会・国際総合防災学会
• [図書] Transportation, Knowledge and Space in Urban and Regional Economics (2018)
  • 著者名/発表者名: B. Anderson,.E. Andersson, C. Burke, Z. Chen, K.E. Haynes, B. Johansson, K. Kobayashi, A. Koike, Y. Konishi, T. Laitila, W.W. Ling Lo, M. Lundgren, H. Maoh, K. Matsushima, S.-i. Mun, Y. Nishiyama, Y. Ohira, M. Okumura, M. Olsson, M. Onishi, T. Otazawa et,al
  • 総ページ数: 336(205-228)
  • 出版者: Edward Elgar Publishing
  • ISBN: 178536605X
• [備考] Toshimori Otazawa's Webpage
  • URL: http://www2.kobe-u.ac.jp/~nazuna/