スマートフォンのGPS機能と情報処理機能を活かして、「ことばの地図」などで視覚障碍者の街歩きを支援するナビシステムの実用展開を目指している。2014年度までの研究成果に、以下の追加、拡充を行うことを目的としている: 1.周辺店舗情報など視覚障碍者のQOL(生活の質)向上に資する情報も含む「ことばの地図」の適地・適時提供をAR(拡張現実)技術で実現する。合わせて、方向定位を支援するデバイス「自律白杖」(簡易ロボット)をシステムに組み込む。2.画面タッチに代わるユーザインタフェースとして、点字を打刻したNFC(近接型無線通信)カードの活用を実現する。3.頻繁なアプリ更新や、ランドマーク記録データの共有、ひいては利用者拡大とナビ対象エリア拡充という正ループの基盤となるクラウド・サービスを実現する。 研究の骨格は、6ヶ月程度ごとに漸進的に繰り返し実施する実験(視覚障碍者が被験者)により成り立つ。2タイプの実験を実施する。(a)狭義の実験(フィールド実験)は大学内・周辺市街地等をフィールドとして実施する。(b)モニター実験は、開発中の音声ARアプリなどを実装した(または、クラウド・サービスに対応した)スマホを視覚障碍者に1カ月間程度貸し出して、日常生活において試用してもらう。 研究第3年度にあたるH30年度は、上記目的1.と2.に関する研究を主に進めた。まず、クラウド・サービスで多様な視覚障碍者に共用してもらうことをイメージした街歩き支援「ことばの地図」を、4地区をスタディエリアとして作成した。そして、多様な被験者(視覚障碍者)に適否を評価してもらうために、実験室内で現地観光地を歩行する際に体験する音環境を再現する「バーチャル散歩実験」を行った。さらに、点字を打刻したNFCカードを白杖等に添付した入力デバイスを複数タイプ作成して、利用環境ごとの適否を検討した。
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