研究課題/領域番号 |
16H04438
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島岡 隆行 九州大学, 工学研究院, 教授 (80202109)
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研究分担者 |
小宮 哲平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20457451)
中山 裕文 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60325511)
サファルザデ アミルホマユン 九州大学, 工学研究院, 特任准教授 (00727381)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 廃棄物 / 焼却残渣 / 再生可能エネルギー / 水素 |
研究実績の概要 |
都市ごみ焼却灰と水を混合、撹拌し、焼却灰中の金属アルミニウムと水の反応により発生した水素ガスを回収し、エネルギー源として有効利用するためには、短時間で、大量の水素ガスを発生させることが求められる。 反応生成物である水酸化アルミニウムが未反応の金属アルミニウムを被覆し、金属アルミニウムの全量が水と反応することを阻害していたことを踏まえ、焼却灰の微粉砕(金属アルミニウムと水の接触効率を飛躍的に向上させること)による水素ガスの発生促進を検討した。具体的には、複数の清掃工場の焼却灰を対象に、振動ミルによる微粉砕(粒径42μm以下)に加え、さらに細かく微粉砕することを目的に、カッターミル及びジェットミルによる微粉砕(平均粒径4.2μm)を行い、未粉砕試料との水素ガス発生特性の比較を行った。微粉砕は水素ガスの発生量の低減をもたらすこと、微粉砕により水素ガスの発生速度は飛躍的に向上することを明らかにし、短時間での水素ガス回収において微粉砕が有効であることが確認された。 水素ガス回収の対象を拡大し、最終処分場に埋立処分された都市ごみ焼却灰からの水素ガス回収の可能性について、焼却残渣主体埋立地のボーリングコアの粒径9.5mm以下(埋立焼却残渣)を試料として検討した。埋立焼却残渣であっても金属アルミニウムが1~3%程度存在すること、水との混合、撹拌により埋立焼却残渣1t当たり最大で3.0m3の水素ガスが発生すること、pHが10以上と高い埋立焼却残渣で水素ガスが多く発生すること、清掃工場から排出された飛灰(キレート処理済み)をpH調整剤として添加することで、溶液のpHが上昇し、水素ガスの発生促進を図ることができることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進捗している。平成29年度に、査読付き論文を2編発表し、国際学会で2編、国内学会で5編発表済みである。さらに平成30年度に、平成29年度の成果について、査読付き論文を2編、国際学会で1編、国内学会で1編発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 水素ガス発生特性に及ぼす影響因子の検討と水素ガス発生の促進 溶液は純水を用いる他、金属アルミニウムの周縁に生成し、水素ガスの発生を抑制する水酸化アルミニウム被膜の生成抑制、または被膜を溶解させる溶媒の検討を行う。建材等に利用される金属アルミニウムの腐食および防食に関する文献を整理することにより、水素ガスの発生が抑制されることなく、持続的に水素ガス回収を可能とする溶媒を用いた実験を行う。アルミニウムのリサイクル流通に乗っていないアルミニウムの切削屑等のアルミニウム残渣の有効利用を意図して、焼却残渣溶液に廃アルミニウムを添加することによる水素ガス発生量の増大を試みる。 (2) 水素ガス回収のLCA解析によるFS評価 本提案による水素回収法においては、一般廃棄物は自燃するので焼却のための追加的なエネルギー投入は不要であり、また生成する焼却灰が水冷される際に水酸化物イオンを形成して高アルカリ性となる上、飛灰には高濃度のアルカリ成分を含有していることから、水素回収プロセスにおいて余分なエネルギーの投入がほとんど発生しない点で有利であると考えられる。この点をLCA解析により優位性を明らかにする。さらに、水素ガスを回収した後の残渣は、塩分が洗い出されておりセメント原料に適していると考えられ、最終の有効利用先としての検討を行う。
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