研究課題
溶解性リグニンを含む当該排水の有機物は、次亜塩素酸で部分酸化することで生物分解性が向上し、嫌気性生物処理によって次 第にメタンに分解することがわかった。また、メタン生成がほぼ終了した生物処理水を再び次亜塩素酸で処理することで、残存 の有機物は更にメタンに生物分解することが確認された。しかしながら、これらの処理によってもメタン生成の反応速度はかなり遅く、約1-2ヶ月の反応時間においても初発有機物の20-50%程度しか分解できなかった。一方、当該排水を減圧蒸留したところ、排水に含まれる低分子成分である酢酸やフルフラール類は蒸留水とともに希散し、リグニンは濃縮液に残留することがわかった。この処理では、液の自燃領域に達する10-20倍に濃縮しても液の粘度はかなり低かったので、排水の燃料資源化・工業用水化には、今まで検討していた化学処理と生物処理の併用ではなく、物理的に水を蒸発される処理と生物処理の組み合わせが適していると考えられた。このため、本年度においては、当該排水を減圧蒸留する膜処理プロセス(膜蒸留プロセス)の検討を進めることとし、爆砕工程の水温に近い80度近辺で各種の蒸留実験をおこなうことにする。膜蒸留プロセスにおいては細孔の「濡 れ」を抑制することが高速処理に必須となることから、疎水性の精密濾過膜や細孔がほとんどない限外濾過膜や逆浸透膜の適用性を検討する。また、蒸留によって得られた凝縮水の成分分析も進め、その組成をもとに嫌気性生物処理の性能をコンピュータで計算する。
2: おおむね順調に進展している
反応が遅い生物処理に対して、高速で排水処理が可能な膜蒸留プロセスの適用可能性を見いだした。
サトウキビバガス水蒸気爆砕排水の処理を従来の生物処理プロセスから切り替え、膜蒸留を主軸とした実験に注力する。
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Journal of Water and Environment Technology
巻: Vol. 15, No. 6 ページ: 220-232
10.2965/jwet.17-015
Vietnam Journal of Science and Technology
巻: Vol. 55, No.4C ページ: 284-290