サトウキビバガスの水蒸気爆砕排水に含まれる高濃度・難分解性の溶解性リグニン等の有機物処理について、正浸透膜と膜蒸留を組み合わせた有機物の濃縮・分離システム(FO膜-MD膜ハイブリッドシステム)を検討した。20%濃度のショ糖を駆動液としたとき、数日間の連続運転でもFO膜のフラックスはあまり低下しなかった。また原水温度を70度、蒸留の真空室圧力を100 hPaとした条件において、MD膜の顕著なウェッティングも認められなかった。 FO膜とMD膜の面積を0.006m2とした実験装置によって、7日間の連続運転によってFO膜モジュール部分で排水の約1.1 Lを濃縮分離することができた。このときの処フラックスは1.08 L/m2 hであり、海水淡水化のRO膜システムと同レベルであった。また、MD膜モジュールの部分でも約1.1 Lの蒸留水を得ることが出来た。連続運転におけるフラックスは平均して17.17 L/m2 hであり、FO膜よりも10倍以上の物質移動性能があった。一方、ショ糖の駆動液にも排水成分の一部がFO膜を通して逆拡散・希釈する現象が認められた。そのため、有機物(TOC)基準では排水を約6倍に濃縮できたが、流量基準ではベースでは約2倍に留まった。駆動液に流出した成分は主に低分子の脂肪酸と陰イオンであり、一部のリグニンも膜を通過するようであった。MD膜で蒸留・回収された処理水には約400 mg-C/LのTOC成分が含まれていた。これらの成分は低級脂肪酸とフルフラール類であった。フルフラール類はエタノール発酵において酵母の反応を阻害すると言われていることから、蒸留水を水蒸気爆砕の原料水にするにはあらかじめ簡易な生物処理でこれらを除去する必要があると思われた。
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