研究実績の概要 |
都市下水UASB内の原生動物は流入SSの分解に寄与していると考えられる。UASBはその形状、下水の有機物濃度、循環流の有無によって上昇線流速が変化する。この上昇線流速が槽内の嫌気性原生動物、流入SS成分の捕捉に及ぼす影響を評価し、以下のことが明らかになった。 ①上昇線流速の上昇に従って原生動物の最大細胞数が増加した。これは上昇線流速によりスラッジベッド内の空隙率が確保され, 原生動物が増殖しやすい環境が作られたためであると考えられる。一方、線流速が大きいと流出SS成分がやや高い値を示したが、これは線流速が大きいほどSS成分が未分解のまま流出したことを示唆している。②上昇線流速やHRTを変更していない同条件下でも原生動物の優占種が変化することが, 特に上昇線流速が大きい条件で確認された。上昇線流速やそれによって確保される空隙率は, 原生動物の優占種を決定するファクターには成り得ないと考えられる。③遺伝子解析により繊毛虫の増加とともに鞭毛虫が減少していること, 繊毛虫が少ない時では鞭毛虫が多くの割合を占めていることが示された。④スラッジベッド内では原生動物は上の方に多く, 下の方は少ないというように, リアクター内での原生動物の偏在が生じていることが明らかとなった。これはリアクター底部にグラニュールが沈殿し, スラッジベッド内の空隙率が減少するためであると考えられる。⑤高上昇線流速条件下では, 槽内の原生動物が強い上昇水流により槽外へ洗い出されウォッシュアウトが発生していることが明らかとなった。
|