研究課題/領域番号 |
16H04444
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
濱 幸雄 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (70238054)
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研究分担者 |
崔 亨吉 室蘭工業大学, 工学研究科, 助教 (20726806)
谷口 円 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 建築研究本部北方建築総合研究所, 主査 (20462351)
佐川 孝広 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90621045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 土木材料 / 二酸化炭素排出削減 / 寒中コンクリート |
研究実績の概要 |
本研究では,混合セメントを用いて無採暖で施工する寒中コンクリート技術を「低炭素型寒中コンクリート技術」と定義して,-5℃程度までの低温環境での水和反応と強度増進が可能な汎用型混合セメントの材料設計と初期材齢時の凍結による被害の程度を定量的に評価できる品質管理手法を提案し,冬期の実環境での施工実験を通して低炭素型寒中コンクリート技術による初期凍害防止と品質向上の効果を実証することを目的としている。今年度は,汎用型早強混合セメントの最適条件の検討し,そのセメントを用いたコンクリートの各種性状試験を実施した。また,各種セメントを用いて凍結開始材齢,凍結温度,凍結時間,凍結深さを変えて初期凍害を与えたコンクリートについて,透気性状からダメージレベルを評価した上で,それとコンクリートの各種物性試験結果の関係を整理し,以下の知見を得た。 1)汎用型早強高炉セメントとして,早強ポルトランドセメントをベースセメントとし,高炉スラグ微粉末を35%,無水石こうを2%,石灰石微粉末を4%混合した高炉B種相当のセメントが,初期強度発現,長期強度増進にも優れ,中性化抵抗性,凍結融解抵抗性,乾燥収縮の耐久性上の問題もなく,環境負荷を低減できるとして適していることを明らかにした。 2)初期材齢の凍結前後でセメントの水和反応性は変化しないことを確認した。また,凍結によるセメントマトリクスの被害程度および回復程度は水セメント比の影響を大きく受け,水セメント比が大きい場合には初期材齢時の凍結によってセメントペーストと骨材界面に剥離を生じ,その後の養生で界面の剥離は回復しないことを確認した。 3)コンクリートの初期凍害機構は,セメントペーストマトリクスに生じるひび割れと骨材界面の遷移帯の剥離が被害レベルに大きく影響していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたとおり,汎用型早強混合セメントの最適条件および基本物性の基礎データを得ることができた。また,寒中コンクリートのおける初期凍害の被害レベルをトレント透気試験,反発度法により定量的に評価する方法を既に確立している。 さらに,初期材齢の凍結前後でセメントの水和反応性が変化しないことを確認し,セメントペーストマトリクスに生じるひび割れと骨材界面の遷移帯の剥離が被害レベルを決定し,セメントの自己修復性能が再養生による性能改善に影響すると考える新しいコンクリートの初期凍害機構を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,本研究の最終年度であることから,これまで得られた知見を検証することを主たる目的として,気象条件の異なる室蘭と旭川において,実構造物を想定したスラブおよび壁の模型試験体を用いた屋外実環境試験を行い,本研究で提案する汎用型早強混合セメントを用いた無採暖施工とトレント法による品質管理手法を組み合わせた「低炭素型寒中コンクリート技術」と従来型の施工法とを比較し,「低炭素型寒中コンクリート技術」による初期凍害防止と品質向上の効果を実証する。 要素実験としては,初期凍害に及ぼす水セメント,凍結条件(凍結開始材齢,凍結持続時間),セメント種別の影響を定量的に評価し,初期凍害判定手法としてのトレント透気試験,反発度法に加えて骨材界面観察およびファイバースコープによる目視判定法を考案し,その適用性を検討する。
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