研究課題/領域番号 |
16H04445
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 祥裕 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (60280997)
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研究分担者 |
古川 幸 東北大学, 工学研究科, 助教 (30636428)
田村 修次 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40313837)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鋼管杭 / 動座屈 / 高層建築物 / 液状化 / 大地震 |
研究実績の概要 |
遠心載荷実験による高層建築物において杭頭補剛された鋼管杭の動的不安定挙動の解明 これまで,遠心載荷実験試験体の上屋構造は,板バネと重りで構成された一質点系であったが,ここでは高層建築物の長周期化(3秒程度)を模擬した上屋模型を製作し,建物の水平変形に伴う高変動軸力を杭に作用させることができた。想定される地震動レベルに対して,高層建築物と地盤との相互作用を考慮し,杭の初期圧縮軸力及び地震時の建物の転倒モーメントによる杭の変動軸力により,杭が動的曲げ座屈を生じ,鉛直支持能力喪失過程を明らかにした。その際,軟弱で液状化を生じやすい地盤から比較的安定した地盤を対象に,地震力の大きさを変化させている。 さらに,全長にわたり,中空断面とした杭試験体模型を製作し,遠心載荷実験を行い,動的曲げ座屈性状,および液状化地盤による杭の水平変形拘束効果を明らかにした。しかし,実建物における鋼管杭には,RC基礎梁との固定度を高めるために杭頭部にコンクリートが充填され,その充填領域は,RC基礎梁形状によるが,慣例的に鋼管直径の1~3倍程度とされてきた。コンクリートの充填効果は,基礎梁と固定度を高めるだけでなく,曲げモーメントの大きい杭頭部の局部座屈発生の抑制効果と曲げ座屈に対する座屈長さを短くする効果が期待できるものの,これまでこのような効果は実験等により確認されていない。そこで,実際の杭頭部を模擬した鋼管杭の動的曲げ座屈挙動を明らかにするために,コンクリート充填長さ,杭の細長比,地盤密度をパラメータとした遠心載荷実験を行い,コンクリート充填による杭頭補強効果を検証するとともに,座屈長さ低減効果を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題である「遠心載荷実験による高層建築物において杭頭補剛された鋼管杭の動的不安定挙動の解明」について, (1) 液状化地盤・鋼管杭-高層上屋構造物の遠心載荷実験 (2) 液状化地盤・実際の杭頭部を模擬した鋼管杭-高層上屋構造の遠心載荷実験 は完了しており,当初想定した成果を挙げている。特に,高層建築物を模擬し,固有周期3秒程度までの模型を製作し,その際,研究計画時点では難しいとされた固有周期の長い上屋の転倒モーメントとP-Δ効果による高変動軸力を杭に作用させることに成功させた。その結果,より実構造物に近いモデルで,杭の動的不安定現象を解明することができた。 一方,(3)遠心載荷実験による液状化地盤下の鋼管杭の動的連成座屈メカニズムの解明については,遠心載荷実験により動的連成座屈メカニズムを生じさせることに成功したものの,その現象解明については途中段階であり,現在も分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,「液状化層における鋼管杭の動的曲げ座屈耐力に及ぼす非液状化地盤による回転拘束効果」を明らかにするために,以下の項目について検討する。 (1) 非液状化地盤による回転拘束効果を考慮した液状化層における鋼管杭の曲げ座屈耐力評価 液状化層は杭全長の一部(数m~20m程度)で生じることから,液状化層における杭が動的曲げ座屈を生じる際,液状化層の上下の地盤が座屈する杭の回転抵抗として働き,杭の曲げ座屈長さを低減できる可能性がある。ここでは,エネルギー法による変分原理を用いて,液状化層以外における地盤を境界条件における回転拘束とした杭の曲げ座屈荷重式を誘導する。これにより,液状化層における地盤の水平拘束効果,液状化層以外の地盤による回転拘束効果を考慮した座屈荷重式を,建築学会の鋼構造限界状態設計指針の一般化座屈細長比に適用した座屈曲線により,このような杭の弾塑性曲げ座屈応力度を求める。そして,有限要素法による弾塑性大変形解析により鋼管単杭の弾塑性曲げ座屈耐力を求め,ここで提案する弾性座屈荷重式及びそれを適用した一般化座屈細長比の座屈曲線の妥当性を検証する。 (2) 非液状化層を有する地盤・鋼管杭-高層上部構造の遠心載荷実験 非液状化層厚を有する地盤・鋼管杭基礎-上屋構造の遠心載荷実験を行い,(1)の曲げ座屈耐力式の妥当性を実験により得られた杭の動的曲げ座屈耐力により検証する。非液状化層と液状化層の間に,極薄で非透過性のフィルムを敷き,両者を明確に分離する工夫を考えている。研究業績1)の実験結果と比較し,非液状化層厚をパラメータとして非液状化層による液状化層の杭の動的曲げ座屈に対する回転拘束効果を明らかにする。
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