研究課題/領域番号 |
16H04450
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十田 博 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40242664)
|
研究分担者 |
楠 浩一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (00292748)
森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (00335225)
北守 顕久 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (10551400)
荒木 康弘 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (40435582)
稲山 正弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70337682)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 木質構造 / CLT / 混構造 / 合成桁 / 長期性能 |
研究実績の概要 |
本課題の検討項目は、①コンクリート-鋼板-木接合部の圧縮せん断試験、②接合部単位のクリープ試験、③実大床の曲げ試験及び設計方法の提案、④実大床のクリープ試験、⑤実用化のための課題整理とその検討、で構成されている。 2016年度の研究は、最も基本となる上記①に重点を置いた検討をおこなった。様々な平面・立体形状、表面処理等を持った鋼板接合具を対象に、集成材またはCLT部材中に接着挿入して、鋼板接着部と木部とのせん断試験を実施し、強度発現に有効な要素を把握した。特に、鋼板に穴を設けることで、穴中に接着剤が投錨効果を発揮してせん断耐力性能の向上に寄与することがわかった。また、スリットに注入した接着剤中に鋼板を挿入するだけで、圧締力を与えずにある程度のせん断強度を安定して得ることが出来たが、その接着強度は木部材の基準せん断強度にわずかに達せず、さらなる改良の余地があると考える。次に、木材-鋼板接着試験体は床材として振動による繰り返し加力を受けることを想定し、10万回以上の片振り繰り返し加力実験に供したが、その結果剛性や耐力の低下は確認されず、信頼性を検証できた。 また、③の検討として、RC床板と木梁をモデル化したFEM数値解析モデルの構築を検討している。①で得られた試験結果を元にして接合部挙動をモデル化し、解析モデルに組み込むことで木-コンクリートの合成桁を3次元モデル化し、荷重伝達の様子を調査している。最適な接合具配置や接合具の要求性能の把握など、次ステップの④実大試験に向けた予備的な検討となる。さらに②については長期クリープ試験用の加力装置について検討し、治具を設計、発注、組み立てが終了したので、2016年度の結果を踏まえて2017年度に試験を開始する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、平成28年度は①接合部せん断実験に関して鋼板接着せん断接合部の仕様を検討し、高性能で施工性や費用的にも優れているものを決定し、②それを用いた単位接合部クリープ試験を開始すること、をあげていた。実際に実施した項目として、①の検討において深く検討すべき課題が見つかったことからそれに対処する一方で、②を開始するのがやや遅れた状態ではあるが、すでに端緒についている。①において繰り返し加力による影響評価試験を新たな項目として実施し、信頼性の確保に向けた検討を追加した。また平行して28年度予定に含まれていなかった数値解析モデルの検討をすでに開始しており、今後の研究進行が円滑に進むことが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の検討①接合部せん断性能評価で優れた性能が得られた条件について、フィードバックをおこない、項目②に関する接合部クリープ試験を開始する。実験パラメータは接着接合具仕様、せん断応力レベル、コントロールとしてのスタッド接合部仕様の試験体、以上を組み合わせた4条件を設定する。木-鋼板の接着接合部のクリープと、鋼板-RCの付着接合部のクリープの両者を計測し、時間と変位進展との関係を調査する。本実験については、恒温恒湿雰囲気下と実環境雰囲気下の両者で実施し、相互比較をおこなう予定であり、前者は共同研究者の所属機関である建築研究所、後者は同広島大学での試験を予定している。 さらに検討項目③における剛性床の数値解析モデルの構築をさらに推し進めると共に、②で得られるクリープ材料定数をフィードバックすることで、これをダッシュポットとして組み込んだ数値解析モデルによる評価手法の検討をおこなう。また検討項目④については年度内の早い時期に実大の合成床の曲げ試験を実施して短期性能を評価し、その結果を受けた実大床モデルのクリープ試験体を作成、実験を開始する。実大床クリープ試験は西日本建材試験センターでの実験遂行を調整中である。
|