研究課題/領域番号 |
16H04455
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小檜山 雅之 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10333577)
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研究分担者 |
西 宏章 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00365470)
高橋 正樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (10398638)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構造制御 / 地震防災 / 構造ヘルスモニタリング / システム同定 / センサネットワーク |
研究実績の概要 |
平成29年度は①建物応答情報の一斉送信による機能維持性の向上方法の構築と②システム同定と構造制御の融合による制御性能の向上について,理論の構築ならびに数値解析,実験を行った。 まず①について,建物内に存在する設備系としてキャスタ付きの医療機器を想定し,キャスタ部分の数値解析モデルを改良するとともに,次年度行う震動台実験に向け試験体の設計を行った。また,特にキャスタなどに埋め込むセンサを後付けで取り付ける場合,低消費電力化が重要な課題となる。センサネットワークにおける低消費電力化に寄与する,新たな通信ルーティングスケジュール手法を提案しその効果を評価した。加えて,制御装置に関し層間同調質量ダンパの検討を行い,層間変形を最小化する最適条件を定点定理により導いた。数値解析と震動台実験を行い,共振周波数付近の応答が低減できることを確認した。このほか,超高層建物の地震時の振動特性に関する検討も併せて行った。 次に,②について,データセンター内の免震床上のコンピュータサーバを想定し,評価関数に状態変数の6次式を用いた多項式制御の有効性の検討を行った。まず,建物・設備のモデルに基づく縮小試験体ならびにセミアクティブダンパを設計・製作した。セミアクティブダンパはその特性を正弦波加振実験により把握した。建物・設備縮小試験体は白色雑音地動の加振実験を行い,部分空間法の一つであるMOESP法によりシステム同定を行い,振動特性を把握した。前年度構築したセミアクティブダンパの弁の切り換えの遅延時間を考慮して制御を行う方法を取り入れた数値解析と震動台実験により検証を実施した。その結果,ローカルに設置され数が限られたセンサの観測情報を用いても,建物全層にセンサを設置した線形制御に匹敵する応答低減性能を達成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり,理論の構築と数値解析・実験による検討を実施した。具体的には,制御理論ならびに振動特性に関する理論の検討や,試験体ならびに試験体に用いる制御装置の設計・試作および動的特性把握のための実験を行った。 また,特筆すべき進捗として,超高層建物の地震時の振動特性に関する検討に関して,水平変位とそれに直交する慣性力により,偏心や位相差入力がなくてもねじれ振動が励起される現象を発見した。正弦波入力時にねじれ振動が励起される条件を導出し,条件を満たす場合,一方向入力の白色雑音地動でもねじれ振動が励起されることを数値解析により確認した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画どおり,①建物応答情報の一斉送信による機能維持性の向上方法の構築と②システム同定と構造制御の融合による制御性能の向上について,実験・解析の両面の研究を研究協力者と連携して実施する。 まず,①建物応答情報の一斉送信による機能維持性の向上方法の構築については,平成29年度に設計したブロードキャスト情報を活用し動作するプロトタイプシステムについて,医療機器などの設備系の被害軽減に効果があるか,震動台実験により検証する。通信の遮断や遅延があった場合のロバスト性についても,性能の確認を行う。そして,震動台実験の結果をもとに,手法の改良を検討する。また,一斉送信に関しては,WiFiブロードキャストについて検討を行う。IoTデバイスを多数利用した実証実験機の構築を行う。 次に,②システム同定と構造制御の融合による制御性能の向上については,平成29年度に製作した建物縮小試験体を用い,平成28年度に構築した構造パラメータの同定とその結果に基づく構造制御の提案手法の有効性を震動台実験により検証する。センサーなどの観測システムの故障や観測データにノイズがある場合のロバスト性についても,性能の確認を行う。震動台実験の結果をもとに,提案手法の改良を検討する。 また,平成31年度の実証実験に向けて,既設の地震観測システムの改良作業を進める。
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