研究課題/領域番号 |
16H04458
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
荒木 秀夫 広島工業大学, 工学部, 教授 (40159497)
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研究分担者 |
貞末 和史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20401573)
八十島 章 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80437574)
寺井 雅和 近畿大学, 工学部, 准教授 (90320035)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 既存建物 / 耐震性能評価 / せん断性能 / コンクリート / 実部材 |
研究実績の概要 |
既存建物の耐震性能評価についてこれまで申請者が蓄積してきた研究成果をまとめて国内外(Prohitech2017, JCI,AIJ,学内紀要)に情報発信するとともに本研究課題に関する資料を収集した.リスボンで開催された 歴史的建造物の保存に関する国際会議ではこれまでに6棟の既存建物から収集したコンクリートの力学的特性および中性化試験の結果をまとめて報告している.また,28年度に実施した既存柱の耐震実験についてはそのせん断性能および補修効果について日本コンクリート工学会の年次論文集に投稿し,発表した.また,この論文は本年度6月にモスクワで開催される国際会議に投稿し,査読を経て掲載・発表予定となっている. 29年度に実施した研究は28年度に載荷実験を実施した柱をエポキシ樹脂で補修し,再度加力を行って地震被災後のひび割れた柱の応急復旧の可能性について検討した.その結果,初期剛性および最大耐力がそれぞれ1.4倍,1.3倍上昇することを確認した.最大耐力についてはこれまでに提案しているエポキシ樹脂の評価方法について妥当性を確認した.また,既存コンクリートに関しては築46年および50年の共同住宅からコンクリートコアをそれぞれ36本,48本採取し,圧縮試験,割裂試験,中性化試験を行った.ヤング係数評価はこれまでの研究成果と同様,既往の推定式では危険側の判定となること,割裂強度はほぼ推定可能であることが分かった.これらの結果は日本建築学会中国支部研究報告会で報告している.また,国際会議にも投稿予定である.この築46年の建物からは梁を2本採取しており,現在加力試験用に加工を行っている.29年12月に解体された建物についてコンクリートコアを36本採取して,圧縮試験,割裂試験,中性化試験を行った段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書中29年度実施計画にある①ひび割れた柱部材にエポキシ樹脂注入することによる耐震性向上効果も従来通り確認できた.この結果は申請者所属の広島工業大学紀要に投稿している。また28年度実施の試験結果は日本コンクリート工学会の論文および国際会議にも投稿できた.②採取した既存建物のコンクリートについては2棟をから得ており、そのうち1つは日本建築学会中国支部研究会で発表した.残りの1棟についてはデータ整理中である。③新規の柱部材の入手が年度半ばであったため,部材実験はできなかったが、すでに試験体加工は進んでおり本年度前半で載荷試験が実施できる見込みである。コンクリートについては複数の既存建物から得ており、有意あるデータを蓄積できていると考えている。全体としてはほぼ予定通りの進捗状況と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
現在試験体用に加工中である梁2本の載荷試験を本年度前半に予定している.昨年同様に試験体にエポキシ樹脂を注入したものの載荷試験を実施する.本年度も解体予定の既存建物から部材およびコンクリートを入手する予定である.建物はすでに決定しており,耐震診断で全階ともに低強度コンクリートであることが判明している.また,同建物の周辺事情によりワイヤーソウやウォールソウによって解体され、部材単位で現場から搬出するため切り出し費用は不要となり、試験体加工費のみの負担となる。いずれの実験においてもせん断性能を主たる検討項目とし,既往の評価式と比較する.これまでと同様にエポキシ樹脂注入による補修効果の可能性についても調べる予定である.これまでに注入した2実部材では予想を上回る注入量であり,その補強効果の評価方法を提案した段階であるが、試験体数が少ないため、本年度の部材実験によりその妥当性について検討をする予定である。28年度実施した実験結果中のコンクリートの材料特性については結果がまとまり次第で論文等で発表し,国内外に情報発信してゆく予定である.
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