研究課題/領域番号 |
16H04459
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 光 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90709734)
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研究分担者 |
吉田 浩子 東北大学, 薬学研究科, 講師 (10241522)
吉野 博 東北大学, 工学研究科, 名誉教授 (30092373)
古田 琢哉 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (40604575)
土方 吉雄 日本大学, 工学部, 准教授 (80156596)
野崎 淳夫 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (80316447)
一條 佑介 東北文化学園大学, 科学技術学部, 講師 (80550574)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線空間線量率予測 / 方向線量計測 / 放射線解析方法 / 放射線防護 |
研究実績の概要 |
今期は【課題1】建物周辺汚染面と、そこから発せられたγ線の建物への入射特性の把握【課題2】建築空間に於ける放射線線量率解析(PHITSによる)に与えるγ線の入射境界モデルの検討【課題3】PHITSと3次元建築モデル(BIM)の連携試行【課題4】遮蔽性能実験の具体的計画立案、の4テーマを計画した。 【課題1】では、当初建物周辺の走行サーベイ等広域の調査を検討したが、事前の総合的な検討により、先ずPHITSにて詳細検討を行った後に、目的を絞り福島県富岡町にて方向線量の現地測定を実施することとした。PHITSによる検討では地表からのγ線の放射特性に影響すると考えられる土壌の組成、放射能の地中深度分布、除染形態等をパラメータとしてγ線のエネルギー帯毎に分析した。 【課題2】PHITSでの屋内空間線量率の解析に用いる建物周りのγ線境界条件の付与方法(仮想線源モデル)を開発した。建物周辺での方向線量計測器による最低限の計測で有効な境界条件を与えることを意図して、PHITSで事前に計算した典型的汚染状況での境界面上の放射線特性を用い、これに計測結果を紐づける方法を開発した。富岡町での実測結果を対象とした解析を試行し、建物内の放射線量率分布の傾向を再現することに成功した。 【課題3】BIMよりPHITSへのデータ連携を行うツールを専門家を交えて企画・製作し、直交系建物モデルの連携が可能となった。上記課題の計算モデルは同ツールにて極めて効率的に生成した。ツールの更なる改善について検討を継続している。 【課題4】遮蔽性能実験に関して、被災地の状況を踏まえて実現可能な方法を検討した。被災地での大掛かりな試験体製作及び運搬は困難であるため、ある程度遮蔽性能が期待される既存のRC建築の開口部に試験壁を嵌め込み、その遮蔽性能を測定する計画とした。候補建物は富岡町所有のRC造の集会所での実施を意図している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択に伴う経費の変更などに応じて実施項目や測定項目の最適化などの調整を加えながら、当初意図した、建物内空間線量率の予測のための研究開発を順調に進めている。第2年度の成果をベースに最終年度も同じく調整しながら全く問題なく進めることができると考えられるため、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、前記【課題1】について、第2年度の成果である地盤面のγ線放射特性に関する検討を発展させ、露出土壌や人工被覆面がパッチワーク状に存在する、実際の住宅地や市街地を想定した汚染源モデルを設定し、その放射特性を検討する。測定にてこの状況を捉えることを意図して、地上と高所で放射線の入射特性を把握する為の測定を検討する。具体的には富岡町の学校等で測定を行うべく町と協議する。【課題2】については、第2年度は平坦地を対象として、除染済敷地と遠方に線源がある2種類の敷地の線源モデルを開発したが、最終年はモデルの適用範囲拡大を検討するとともに、測定にて検証データの充実を図る。【課題3】については、BIMによる建築モデルを放射線解析へよりスムーズに受け渡す法を検討する。また斜め面等直行系以外の連携方法を検討する。【課題4】については、第2年度の検討に基づき、RC造の集会所にて開口部を利用したサンプル壁体の遮蔽性能測定を計画する。この測定に先立って、PHITSにて壁体構成と遮蔽性能の関係を検討し、実験にて検証すべき試験体の仕様を決定する。現地にて廃棄物を極力出さず、また効率よく測定を実施する計画とする。 以上を総合し、放射能事故被災地での新築、改修計画に於いて、建物及び敷地の比較的簡易な調査と計測で建物内の放射線量率を実用可能な精度で予測する方法の確立を目指す。
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